第8話 異端者と審問官、そして余計なことを言う者たち

【場面:王都の路地裏】


(エリク、マリナ、バルドの三人は、貴族街から少し離れた王都の路地裏を歩いていた。夜の街は静かだが、時折、巡回中の兵士たちが見回っているのが見える。)


エリク(小声で)


「いやー、バルドのおかげでここまでスムーズに来れたな! さすが元異端審問官!」


バルド(冷静に)


「いや、特に何もしてないぞ。普通に歩いてるだけだ」


エリク(不満そうに)


「もっとこう……忍者みたいにサッと動くとかさ、影に溶け込むみたいな演出が欲しいんだよなぁ」


マリナ(呆れたように)


「そんなことしなくても、普通に歩いてるだけで怪しまれずに済むわよ」


エリク(納得がいかない様子で)


「でもさ、追われてる異端者って、もっとドラマチックに逃げるもんじゃない? 壁を走るとか、屋根を飛び越えるとか……」


バルド(ため息)


「やりたきゃ一人でやってくれ」


マリナ(くすっと笑って)


「エリクが屋根を飛び越えたら、確実に落ちて捕まるわね」


エリク(腕を組んで)


「ちょっと待って、俺をなんだと思ってるんだよ」


バルド(即答)


「落ちる人間」


マリナ(うなずく)


「間違いないわね」


エリク(がっくりと肩を落として)


「おい、異端者の主役がこんな扱いでいいのかよ……」



【場面:異端審問所】


(一方、異端審問所では、ノヴァクと娘のヨレンタがエリクたちの行方を追うための作戦会議をしていた。だが、どう見ても真剣な雰囲気ではない。)


ノヴァク(椅子に座って足を組みながら)


「さて、エリク・ファルマの捜索指令が正式に下ったわけだが……うーん、どうするかな」


ヨレンタ(書類を広げながら)


「どうするかな、じゃありません。ちゃんと手順を決めないと、また『面倒だから明日にしよう』って言い出すんでしょ?」


ノヴァク(驚いたように)


「おいおい、そんなこと言ったことあったっけ?」


ヨレンタ(即答)


「昨日です」


ノヴァク(考え込む)


「……ああ、そうだったな。うん、たしかに昨日は面倒だった」


ヨレンタ(ため息をついて)


「だから、今日はちゃんと動くんですよ!」


ノヴァク(仕方なさそうに)


「わーった、わーった。で、エリク・ファルマはどこにいるんだ?」


ヨレンタ(書類をめくりながら)


「目撃情報によると、貴族街の外れで見かけられたそうです。つまり、まだ王都内にいる可能性が高いですね」


ノヴァク(腕を組みながら)


「うんうん、それっぽいな。でもな、ここで問題なのは——」


(ここで、ノヴァクは突然椅子を倒し、横になりながら言った。)


ノヴァク(のんびりと)


「——俺たちが動く必要、ある?」


ヨレンタ(思わず拳を握りしめて)


「あります!!」


ノヴァク(肩をすくめて)


「いやさ、どうせ捕まるんだから、もうちょっと泳がせといてもいいんじゃない?」


ヨレンタ(冷静に)


「いいえ。エリクが広場で“王国を変えるぞ!”って叫んだらしいんです」


ノヴァク(吹き出しそうになりながら)


「えっ……それ、本気で?」


ヨレンタ(真剣に)


「本気で。証言によると、かなりノリノリだったとか」


ノヴァク(大爆笑しながら)


「ちょっと待て、異端者ってもっとこう……ひっそりと動くもんじゃないのか!? なんで堂々と宣言してるんだよ!」


ヨレンタ(肩をすくめながら)


「さあ……そこが謎です。もしかすると、天才的な計画があるのかもしれませんし、ただのバカかもしれません」


ノヴァク(しばらく考え込んで)


「なるほど、天才かバカか……これは確かめる価値があるな!」


ヨレンタ(驚いたように)


「えっ、急にやる気出ました?」


ノヴァク(ニヤリとしながら)


「うん、こういうタイプの異端者は面白い。正直、普通に捕まえるのはつまらないが、これはちょっと違う。どっちのタイプか見極めたくなってきた」


ヨレンタ(ため息をつきながら)


「結局、楽しみたいだけですよね……」


ノヴァク(笑いながら)


「人生、楽しんだ者勝ちだからな!」



【場面:王都の酒場】


(エリクたちは、ひとまず身を隠すために酒場に入っていた。エリクはカウンターで飲みながら、マリナとバルドと会話をしている。)


エリク(楽しそうに)


「いやー、王国を変える宣言、いい感じだったな! 俺、歴史に名を刻む予感がする!」


マリナ(冷静に)


「歴史に名を刻む前に、捕まるわよ」


バルド(呆れながら)


「お前、完全に異端審問官に狙われてるぞ」


エリク(にっこりと)


「でもさ、こういう時こそ、大胆に動くべきじゃない?」


マリナ(ため息)


「その“大胆”が問題なのよ……」


バルド(酒を飲みながら)


「まあ、どうせすぐに動かなきゃいけないしな。ノヴァクの奴が本気を出す前に、こっちも準備しないと」


エリク(ニヤリと笑って)


「よし、次の作戦は——」


(その時、酒場の扉が勢いよく開く。そこに立っていたのは、異端審問官ノヴァクだった。)


ノヴァク(ニヤリと笑いながら)


「よぉ、エリク・ファルマ。面白い話が聞こえてきたぜ」


エリク(固まる)


「えっ……早くない?」



To be continued…


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