第7話 異端審問官ノヴァクの依頼

【場面:王都の異端審問所、ノヴァクのオフィス】


(王都の異端審問所。厳かな雰囲気の中、広いオフィスに異端審問官ノヴァクが座っている。彼は中年の男性で、鋭い目を持ちながらも、どこかだらしない部分を見せる。机の上には、数多くの書類が山積みになっているが、その中で目を通す様子もなく、足を組んで椅子に座っている。)


ノヴァク(ため息をつきながら)


「もう、何でこんなに依頼が多いんだ? 本当に異端者って、次から次へと現れるな。今日もまた、うるさい騒ぎを聞きつけてきたってわけか」


(その時、ノヴァクのオフィスの扉がノックされる。ノヴァクは足をぶらぶらさせながら、適当に手を挙げて「入れ」と言う。)


ノヴァク(やや飽きた様子で)


「ん? 何か重要な報告か?」


(扉が開き、娘のヨレンタが入ってくる。ヨレンタは十代後半の女性で、父親のように鋭い目つきではないが、どこかしっかりした印象を与える。)


ヨレンタ(しっかりとした足取りで)


「父上、今日は新たな依頼が来ました」


ノヴァク(だらけた表情で)


「またか……異端者の駆除か?」


ヨレンタ(ちょっと困った顔で)


「駆除だけじゃないです。今回は、かなり面倒な依頼です」


ノヴァク(すでに足を投げ出して、机の上の書類を適当に整理しながら)


「面倒な依頼だと? それがどうした。面倒だからこそ、報酬がいいんだろう?」


ヨレンタ(少し心配そうに)


「父上、あなたが面倒くさがってばかりだから、依頼人も困っているんですよ。今回は、王国を揺るがす可能性がある事件です」


ノヴァク(無関心そうに)


「揺るがす? どうせまた、偽りの学説に踊らされてるだけの連中だろう」


(ヨレンタは机の上に依頼書を置き、父親の前に座る。)


ヨレンタ


「父上、今回はただの学説じゃないんです。エリク・ファルマという学者が、王国の理論を根底から覆すと言って、王都を歩き回っているそうです」


ノヴァク(突然興味を示して)


「ほう、エリク・ファルマ? なんだ、あの男が王国の学説に挑戦しているのか?」


ヨレンタ(真面目に)


「その通りです。彼の理論は、神々が世界を支配しているという信念を覆すものです。それを信じている者たちは、彼の影響力を受けて、ますます反乱を起こすかもしれません」


ノヴァク(あくびをしながら)


「反乱だと? そんなことで王国が揺らぐなんて、どうかしてる。信者が少し増えたくらいで、そこまで問題になるか?」


(ヨレンタは少し憂鬱な顔をしながらも、父の反応を気にしつつ話す。)


ヨレンタ


「ですが、彼の理論が広まれば、学者や研究者だけでなく、一般市民にも影響を与えるかもしれません。信仰の基盤を覆すことになるので、国の安定を揺るがす可能性が大きいんです」


ノヴァク(軽く笑いながら)


「なるほど、信仰か……そんなものを信じてるのか。まぁ、俺は教義も神々の理論もどうでもいいけどな。俺がやらなきゃいけないのは、その“面倒な連中”を取り締まることだろ?」


ヨレンタ(真顔で)


「はい。それに、今回はかなり慎重に動くべきです。信者たちが静かに立ち上がる前に、彼を捕らえて証拠を集めなければなりません」


ノヴァク(机の上でペンを転がしながら)


「おいおい、娘よ、そんなに真面目に言われてもな。確かに、エリク・ファルマが面倒だってのは分かるが、それだけか?」


ヨレンタ(少し苛立ちながら)


「父上、私は本気で心配しているんですよ。あなたが『面倒だからやりたくない』と逃げていたら、王国の秩序が崩れてしまいますよ!」


ノヴァク(ふっと顔を上げて)


「そんなこと言っても、俺はただの異端審問官だ。どうせ捕まえるだけだろ? それに、逃げるのがうまい奴を捕まえるのは俺の仕事だ」


(突然、ノヴァクがニヤリと笑って、ヨレンタに向かって言った。)


ノヴァク(冗談っぽく)


「まぁ、どうせなら、捕まえる前にちょっとした遊び心を加えたいもんだな」


ヨレンタ(呆れた顔で)


「遊び心ですか? そういうことを言うから、あなたはいつも本気で取り組まないんです」


ノヴァク(目を細めながら)


「いいじゃないか。仕事に遊び心を加えるのが、俺の流儀だ」


(ヨレンタはため息をつき、少し疲れた表情を浮かべる。)


ヨレンタ(しばらく考えた後、静かに言う)


「父上、あなたはどうしてこんなに気楽に考えているんですか? このままだと、王国が本当に危なくなるんですよ?」


ノヴァク(リラックスして椅子を倒しながら)


「ほら、そんなに真剣になりすぎるな。俺たちの仕事は、ただの“掃除屋”だ。掃除だ、掃除! それ以上でも以下でもない」


(ヨレンタはしばらく黙っているが、少し肩をすくめながら言った。)


ヨレンタ(冗談っぽく)


「掃除屋……。じゃあ、父上は掃除するのが得意なんですね。ほら、ホウキ持ってきましょうか?」


ノヴァク(一瞬目を見開き、そしてにっこりと笑う)


「おお、いいね! ちょうどいいタイミングだ。あれもこれも、きれいに掃除しちまおう!」


(ヨレンタは呆れながらも、少し笑ってしまう。)


ヨレンタ(苦笑しながら)


「結局、何も変わってませんね、父上。まったく、どうしてこうなるのか……」


ノヴァク(嬉しそうに)


「だからこそ、楽しいじゃないか! ほら、行動あるのみだ。俺たち、明日からエリク・ファルマを追い詰めるぞ!」


ヨレンタ(ため息をつきながら)


「何も決まってないですけどね……」



To be continued…


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