第9話 異端審問官 vs. 異端者(口八丁)

【場面:王都の酒場】


(エリク、マリナ、バルドの三人は、身を隠すために立ち寄った酒場で酒を飲んでいた。しかし、そこへ異端審問官ノヴァクが堂々と現れ、酒場の空気が一気に凍りついた。)


ノヴァク(ニヤリと笑いながら)


「よぉ、エリク・ファルマ。ずいぶんと派手に動いてるみたいじゃねぇか?」


エリク(内心焦りつつも、平静を装って)


「え、俺? いやいや、そんなことないよ。ただ、酒が飲みたかっただけなんだよね!」


ノヴァク(椅子を引いて座りながら)


「ほう、異端者が堂々と酒場で飲んでるとはな。度胸があるのか、それともただのバカなのか……」


エリク(にっこり笑って)


「いやいや、異端者ってさ、もっとこう、こそこそ逃げるもんでしょ? 逆に、こんな堂々としてたら“こいつは違うな”って思われるんじゃない?」


ノヴァク(興味深そうに)


「ほう……“堂々としてると怪しまれない”理論か?」


エリク(自信満々で)


「そうそう! 例えばさ、泥棒が銀行に忍び込む時、黒い服着てこそこそ隠れながら行くより、スーツ着て堂々と“こんにちは~”って入ってくほうがバレないでしょ?」


ノヴァク(目を細めて)


「……いや、それは普通にバレるだろ?」


エリク(即答)


「バレない! バレないって!」


マリナ(小声で)


「いや、絶対バレるわよ……」


バルド(肘をつきながら)


「少なくとも、銀行強盗の例えはよくないな」


エリク(軽く咳払いして)


「ま、まぁ、それは置いといて……。そもそもさ、ノヴァクさん、こんなところに何しに来たの?」


ノヴァク(ニヤリと)


「そりゃ、お前を捕まえに来たんだよ」


エリク(驚いたふりをして)


「えぇー!? 俺、捕まえられるようなこと、何かしたっけ?」


ノヴァク(呆れながら)


「お前、昨日の夜、王都の広場で“王国を変えるぞー!”って叫んだらしいな?」


エリク(笑顔で)


「いやいや、あれは違うよ!」


ノヴァク(眉をひそめて)


「違う?」


エリク(しれっと)


「あれは俺じゃなくて、“エリク・ファルマに似た誰か”だったんじゃない?」


ノヴァク(腕を組んで)


「お前、それで通ると思ってるのか?」


エリク(真剣な表情で)


「思ってる!」


ノヴァク(ジト目で)


「……お前、まじで適当だな」


エリク(にっこり)


「褒め言葉として受け取っておくよ!」


ノヴァク(ため息)


「じゃあ聞くが、お前が王国を変えようとしてるって噂、どう説明する?」


エリク(あっさりと)


「いや、それは“誤解”だね」


ノヴァク(疑いの眼差しで)


「誤解?」


エリク(真剣に)


「俺が言ったのは、“俺たちの世界を変えよう!”ってことなんだよ!」


ノヴァク(しばらく黙ってから)


「……何が違うんだ?」


エリク(笑顔で)


「ニュアンスが違うのさ!」


ノヴァク(頭を抱える)


「……お前、本当に厄介なタイプの異端者だな」


バルド(苦笑しながら)


「まぁ、そういう奴だからな」


マリナ(冷静に)


「だからこそ、今こうして追われてるのよ」


ノヴァク(軽く笑いながら)


「お前ら、ずいぶんと楽しそうだな。異端者の逃亡劇って、こんなにのんきなもんだったか?」


エリク(肩をすくめて)


「いや、実際めっちゃ大変だよ? でもさ、どうせ追われるなら、楽しまないと損じゃん?」


ノヴァク(腕を組んで考え込む)


「ふむ……確かに、考え方としては間違ってないな」


エリク(すかさず)


「でしょ!? じゃあ、俺たちを捕まえるのは“もうちょっと後”にしない?」


ノヴァク(少し笑いながら)


「“もうちょっと後”って、どれくらいだ?」


エリク(適当に)


「えーっと、5年後とか?」


ノヴァク(即答)


「長ぇよ」


エリク(真剣に)


「じゃあ、3年!」


ノヴァク(ジト目で)


「交渉する気、あるのか?」


エリク(両手を広げて)


「じゃあ、1週間!」


ノヴァク(しばらく考えてから)


「……まぁ、すぐに捕まえるのも面倒だしな」


マリナ&バルド(驚いて)


「えっ、折れるの!?」


ノヴァク(苦笑しながら)


「いや、正直な話、お前ら捕まえるの面倒なんだよ。いちいち言い訳して逃げるし」


エリク(にっこり)


「俺たち、捕まりにくい異端者だからね!」


ノヴァク(ため息をついて)


「……はぁ、わかった。とりあえず今回は見逃してやる。ただし——」


エリク(身構えて)


「ただし?」


ノヴァク(笑顔で)


「次に会った時は、本気で捕まえにいくからな」


エリク(笑顔で)


「いやいや、次に会った時も、またこうやって“交渉”しようよ!」


ノヴァク(ニヤリとしながら)


「さて、どうかな……」


(そう言って、ノヴァクは立ち上がり、酒場を後にした。)


マリナ(信じられない様子で)


「……本当に帰ったわよ」


バルド(苦笑しながら)


「お前、ほんと口八丁だけで生きてるな」


エリク(ドヤ顔で)


「異端者ってのは、捕まらなきゃ正義なのさ!」



To be continued…


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