第7話
彼女と一緒に「たいやき」を食べてから、もうすぐ一週間がたつ。
この一週間、一度も彼女に会っていない。
一週間ずっと会えないことは今までにもあった。
だけど、なんだか心臓がいつもより速く、いつもより大きく、どくどくいってる。
「彼女に会いたい。」
そう思った。強く……、強く……。
「彼女の声が聞きたい」
そう思った。早く……、早く……。
そのときふと、あの時の言葉を思い出した。
あの別れ際の言葉を。
僕は気付いた。
あの言葉に込められていた意味を。
彼女はいつも別れ際には、「またね」と言ってくれていた。
だけどあのときは、「またね」と言ってくれなかった。
僕の中をとても速くて、とても大きくて、そして、とても、とても痛い、何かが駆け抜けた。
僕は街の中を走り回った。
……ううん、捜し回った。彼女の姿を。
彼女がいない。
どこにも………。
僕はあまりきかない鼻も使って、一生懸命彼女を捜した。
彼女のだと思う匂いをたどって、ある一軒の家にたどり着いたけど、家の明かりはついていなかった。
他にも彼女が行きそうなところは全部行った。
彼女とよく会った道、彼女が通う学校、彼女に「たいやき」を買ってもらった商店街、それから、彼女と初めて出会ったあの公園にも。
何度も、何度も……。
だけど、彼女は、いなかった……。
彼女を捜している間中、彼女の言葉が頭の中で繰り返されていた。
『バイバイ、ワンちゃん……』、あの別れ際の言葉が。
そして、彼女の表情も頭から離れなかった。
悲しそうな、寂しそうな、何か嫌な事があったような、けれど色々あきらめているような、そんな複雑なあの表情が。
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