第24話 帰り道

「今日はこのまま帰ろうか」

「換金は?」


「まだ、ネームドの物は出したく無いんだよね、お金も割と余裕あるから良いかなって」

「そっか、じゃあこのまま帰ろっか」

 マイカも納得してくれたみたいなんで、このまま宿に向かう事にしよう。


「ん?」

 冒険者が多い街だから、喧騒はいつもの事なんだけど……。


「子供の声が混じってたわ」

「やっぱりそうだよね」


 大人たちの怒声に近い声に掻き消えてしまいそうだけど、僅かに小さい女の子の声が聞こえた。


「行ってみようか」

「そうね」


 声の方に向かうと、三人のいかにも冒険者という風情の汚いオッサンたちが何かを囲んでいる。

 よく見えないけど、全員顔の向きが下だからから、あそこに少女がいるんだと思う。


「やめてよう、これはアタイが採ってきたんだよう」

 近づいた事で内容がはっきりと聞こえた。


「うるせぇ! あそこの場所のもんは全部俺たちのもんなんだよ!」


 近づくと、三人の男どもの囲ってる中に、俺たちより年下の女の子がしゃがみ込んで泣いていた。


「あれ……」

 マイカの血の気が失せて、顔面が蒼白になっていく。


「あ……」

 幼い少女が持っているのは、薬草だった。

 前の街での騒動の原因になったあアレと同じ物。


 記憶がフラッシュバックする。


 ダメだ! 落ち着け俺! 事情も知らないのに殺意を抱いてはいけない。


「はぁぁふぅぅ」

 思いっきり深呼吸する。


「あの! この子が何かしたんですか?」

「ああん? 誰だおめぇ? 部外者は引っ込んでろ!」


「いや、でも、その子泣いてますし……」

「こいつはな! 俺たちの見つけた場所の薬草を無断で採ったんだ! 落とし前つけねぇといけねぇ」


 自分の身体が総毛立つ感覚に襲われる。

 あまりにも似すぎるシチュエーション。


 あ、ダメだ……。

 もう他人事と思えなくなってきてる。


 今ならこの子の為にこいつら皆殺しに出来そう。


「リュウ!」

 マイカの声で我に帰る。


 気づかないうちに拳を握ってたらしい。

 自分の爪が掌にささって痛かった。


 まずは事情を聞かないと。

 あのゴロツキ共にも何やら言い分があるらしいし。


「その薬草の場所ってあなた方の土地なんですか?」

「んな訳ねぇだろ、バカかおめぇ」


「あなた方が採ってきた物をこの子が盗んだのですか?」

「採ってきてはいねぇが、あそこの物は俺らのもんだからな! 盗んできたってのは当たりだな!」


「俺らのもんって何か権利とか持ってるんですか?」

「先にあの場所を見つけたのは俺らだ! なら、俺らのもんなのが当たり前だろ?」


「えーっと、山だか林だか分からないですけど、薬草生えてるのを見つたけど採らなかったのを、この子が採ったから俺達の物だから返せって言ってるんですか?」

「だから、最初からそう言ってるだろ! バカかお前?」


 やっぱり殺して良くないか?

 こいつら生きてる価値なんかあるか?


 あーダメだ! ダメだ! 

 最近すぐ思考が殺伐としてしまう。


 オッサンにも目立つなって言われてるんだから、穏便に話さないと


「その薬草を俺がこの子の代わりに買うから許して貰えませんか?」

「ほほう、ガキがガキの為に薬草買うのか! 俺も鬼じゃねぇ、そこまで言うなるってやるよ」

 そう言って指を三本出してきた。


 銅貨三枚かよ! 高すぎるだろ! 足元見やがって!


「じゃあ、これ」

 クソ冒険者に銅貨を渡す。


「おいおいおい、ふざけるなよ! 銀貨三枚だろうが!」

「はああああああ? こんな薬草が銀貨三枚な訳ねぇだろ!」

 ふざけてるのはそっちだろうが! なんなんだこのクソ冒険者!


「俺の薬草を俺がいくらでも売ろうが、俺の勝手だろうが!」

 オレオレ煩いんだよ! あークソ!

 穏便に! 穏便に!


「払えば良いんだろう! 払えば! ほら! これで文句ないだろ!」

「ははっ! こいつ本当に払いやがった! バッカじゃねぇの!」

 高笑いをしながら三人が去っていく。


 後ろから簡易鑑定した。

 次はもう許さない!


 バッツ レベル1

 クラス 盗賊ランク1

 スキル 器用


 ザコイ レベル3

 クラス 盗賊ランク1 戦士ランク1 拳闘士ランク1

 スキル 器用 

     武器戦闘

     手技格闘


 クズダ レベル4

 クラス 盗賊ランク4

 スキル 器用

     隠身

     箱罠調査

     施設罠調査


 この世界の盗賊は戦闘職じゃ無い。

 マイカの取った斥候の方が弓や投擲のスキルが取れる分まだ戦闘が出来る。


 レベルはクズの方が高いけど、この中で一番戦えるのはザコの方だ。

 

 どっちにしろメチャクチャ弱い奴らだった。

 見た目だけかよ!


 こういう時の人の見る目も養っていかないとダメだなぁ。


「お兄ちゃん、お姉ちゃん、ありがとうございました」

「でも、こんな薬草何に使うの?」

 マイカが少女に問いかける。


 そうなんだよね、この薬草をひと束くらい持っていっても低級の回復薬くらいにすらならない。

 もっと量が必要なはずだ。


「これをバァバのとこに持っていくの!」

 好奇心も湧いたので、護衛も兼ねて少女についていくことにした。


「お嬢ちゃんお名前は?」

「コットン!」

「じゃあ、コッちゃんだね」

「うん!」

 マイカと会話してとちょっと姉妹っぽいな。

 でも、コッちゃんの髪は緑だけどね。


 ボロの貫頭衣がいかにも裏町の住人って感じだ。


 前にいたところも、こんな感じの子いっぱい居たもんな。


「ここ!」

 スラム街の奥まった場所にポツンとテントがあった。

 そこからな強烈に薬草の匂いがしてた。


「これは……」

「薬師ね」

「バァバ持ってきたよ!」

 コッちゃんは嬉しそうに中に入って行った。

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