第25話 スラム街の薬師

「コット! お前本当に持ってきたのかい! はぁ、参ったねぇ、約束だその薬持っていきな」

 そこには、お伽話に出てくる悪い魔女が居た。

 もう、見た目がそれにしか見えない。


 薬じゃなくて毒売ってるんじゃなかろうか?


「こんにちは」

「おや、見かけない顔だねぇ? ここはお前達の様なもんがくる所じゃないよ、おかえり」


「あ、いや、俺……僕たちはこの女の子と偶然あって……」

 ここまでの経緯を話した。


「物好きもいるもんだね! この子はね、そこの銀貨一枚の薬をね、たった小銅貨二枚で買おうとしたんだよ」

「小銅貨二枚で……」


「この子にとっちゃ必死で集めたお金だろうがね、そんな金額じゃ売れないって言ったんだけどね、どうしてもってしつこくてね、仕方がないか無理難題吹っ掛けたのさ」

「無理難題?」


「自前で薬草採ってこれたら売ってやるってね! まさか本当に持って来るとはね!」

「はぁ……」

 え? 無理難題か? この草は割と近場に生えているぞ。

 それに、こんな量じゃ絶対薬は作れない。


 他の人のこともあるから、銀貨一枚の薬を小銅貨二枚で売る訳にいかないから、仕方なくって理由つける為にこういう事したんじゃなかろうか?


 確かに、こんな子供にしてみれば難しい条件ではあるけど、あの子と同じ歳くらいでドングリ拾いに行ってた子だって居たしな。


 この悪い魔女風オバァさんは、良い人なのでは?


「バァバありがとう貰っていくね!」

 コッちゃんが大事そうに抱えて走り出した。


「あんたら悪いが、あの子が家にちゃんと着くか見届けてくれないかい?」

「あ、はい!」

 俺達はコッちゃんの後を追いかけた。


「母ちゃん! バァバから薬買ってきた!」

「あらあら、また無理難題言ったんでしょ……ゴホッ!ゴホッ!」


「無理難題言ったのはバァバの方だよ! あたいはちゃんとお金出して買った!」

「そうかい……ゼンノさんには感謝しないとね」


「こんにちは……」

 母ちゃんと呼ばれた人は寝たきりになっていた。

 そして明らかに、すえた臭いがする。


 素人が見ても助からない人だと分かった。


「あの……うちの子が何かしましたでしょうか?」

「あ! いえいえ全然全然! たまたま出会いまして、なんとなくここまで送ってきただけです」


「そうだったんですね、何もおかまいも出来なくて……」

「あああ! もう帰るんで大丈夫です!」

 俺達は慌ててその場から離れた。


 その足で薬師の婆さんのもとに行く。


「コッちゃんのお母さんを治す薬ってないんですか?」

「なんだい急に! まぁ、有るには有るけど、高いよ」


「いくらですか?」

「金貨十枚」


「じゅ、十枚! はぁぁ、いや! うん! 十枚あったらコッちゃんのお母さん助かる薬作ってくれるんですね!」

「バカ言っちゃいけないよ! そんな薬を私が作れる訳ないだろ? 知り合いから買って来るのさ」


「知り合いから買って来れるんですね!」

「あぁ、買えるよ」


「分かりました! マイカ今からダンジョン戻って良いかい?」

「もちろん!」

 マイカが嬉しそうに笑う。


 俺が無理して助ける事の出来る命があるなら!

 俺は助けたい!

 だって俺たちは無理して助けて貰った命なんだから!


 ー ダンジョン十六階 ー


 初心者ダンジョンの十一から十五階までは草原ダンジョンでイノシシが出る。

 そして今俺たちが居る十六階からは牛だ。


 マッドブルっていう茶色い牛が突然草原に現れて突進して来る。

 マッドって泥の事らしく、この階層にある水溜りみたいな所に棲息している。


 そして、獲物が近づくと、そこから出て来て突進して相手を倒す。


 事前情報を知らないと何も無いところに、いきなり現れた様に見える。


 こいつのドロップ品は通常は、銅貨七枚の革か銅貨三枚の角だけど、レアで肉を落とす。

 だいたい三十体に一体くらいだ。

 それは銀貨二枚になる。

 そして、さらに肉十個に一個くらいの確率でシャトーブリアンって肉を落とす。

 これが金貨一枚になる。


 これを狙っていく。

 これが出るまでのドロップ品も含めれば、金貨二枚分くらいになるはず。

 それをポケットで数を増やせば金貨六枚。

 金貨も増やせば十枚に届く。


「遭遇率上げる為に十九階まで降りるよ」

「うん、大丈夫」


 この階層は十一階から全部ドングリは二個分の魔石だからレベル上げにはあまり向いてない。


 先に二十一階に降りてドングリ三個分で動きも鈍い亀と戦う方が効率は良い。

 でも、今回の目的はお金稼ぎだから、こっちだ。


「リュウ! 来た!」

「了解! 『陽気』『陰気』『硬気』『練気』」

 今使えるモンクのスキルを全部使って、真正面から迎え撃つ。


「破ァァ!」

 相手の突進に合わせて正拳突きをマッドブルの額に叩き込む。


「痛ってぇぇぇぇ!」

 一応、一撃で倒せるんだけど、めちゃくちゃ痛い。

 多分骨が折れてる。

 毎回、回復術師のスキルで治しながらの戦闘になる。


 ポケットにMP使う余裕ないから、そういうのは後回しでひたすら倒す。

 ……

 ……

 ……

「よっしゃ! やっと出たぁぁぁ!」

 最初の頃に作った丸薬まで全部使ってMP回復しながら、限界ギリギリまで戦って、やっと出た。


 明日一日かけて、増やして売り捌こう。

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