エピローグ:暁に咲く音色

ニューヨークの摩天楼が朝焼けに染まり、静かな街路に長い影を落としていた。ホールを後にしたレオナルドとダリアは、無言のまま並んで歩いていた。夜明けの冷たい空気が頬を撫で、昨日までの激動がまるで遠い夢のように感じられる。


「本当に……終わったんだね」


ダリアが呟くと、レオナルドは小さく頷いた。彼の表情には、安堵とも名残惜しさともつかない複雑な色が浮かんでいる。


「ああ。解散コンサートが、こんな形で続くなんて想像もしなかった」


二人の足音が、まだ眠る街に静かに響く。どこかのビルの隙間から、小鳥のさえずりが聞こえた。それはまるで、新しい一日の始まりを告げる祝福のようだった。


「これから、どうするの?」


ダリアがそっと尋ねる。レオナルドは一度立ち止まり、東の空を仰いだ。朝日が少しずつ街を照らし始め、オレンジ色の光が彼の横顔を淡く染める。


「音楽と共に生きていく。絶望を超えたその先で……俺は、音楽を信じていたい」


その言葉に、ダリアは静かに微笑んだ。彼女の中にも、同じ思いが広がっていた。


「私も同じ。音楽が繋いでくれた絆を大切にしながら、これからも進んでいきたい」


レオナルドはふと、肩にかけていたバイオリンケースを開いた。朝焼けに照らされたバイオリンの木目が、温かい光を受けて柔らかく輝く。


「朝焼けの音色、奏でてみようか」


そう言うと、彼は弓を取り、ゆっくりと弦の上を滑らせた。透明感のある旋律が、静寂に包まれた街の空に溶けていく。まるで、目覚めたばかりの街に語りかけるような、優しくも力強い音色だった。


ダリアはそっと目を閉じ、その旋律に耳を傾けた。そして、心の中に浮かんだ歌詞を、静かに口ずさむ。二人の音楽が絡み合い、夜明けの街を包み込んでいく。


朝の風がそっと吹き抜け、音楽を未来へと運ぶように響かせる。


二人は顔を見合わせ、微笑んだ。


「どんな困難があっても、音楽があれば乗り越えられる」


「うん。音楽が続く限り——私たちは進み続けられる」


そして、彼らは歩き出した。


朝陽が地平線から顔を出し、二人の背中を優しく照らした。まるで、未来へと続く道を示すように——。


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暁のダイヤモンド—摩天楼に響く最後の旋律— Algo Lighter アルゴライター @Algo_Lighter

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