まず最初に、内容自体はかなり硬派な警察小説である。
今日まで続く北朝鮮の諜報活動の一端と、それに対する警察官の動きが、丁寧にかつリアリティーに書かれている。
真相は明確に明らかにされず、登場人物たちの考察を参考にするしかないが、その考察も時代背景や事実に合っており説得力がある。
そして飯描写。
出てくる飯の種類は多くないが、その分描写が凝ってる。
これだけでも読む価値がある。
やはり人間、三大欲求に対する刺激には弱いのだ。
最後に、博多弁。
舞台が舞台なので、博多弁自体は出てくるのは不自然ではない。
しかし音声と画像ベースの映像作品と違い、文字ベースの小説ではコテコテの方言はキャラ付けが容易に出来るぶん、読みにくくなるという諸刃の剣となる。
それでもなお、方言を書き切るというのは作者の矜持を感じざるをえない。
これら三つの要素が上手く噛みあい、有象無象の警察諜報ものとは一線を画している。