(十一)語尾に「アル」が付く男の子

「お前マジで、ムカつくぐらいイケメンだな!」

「何だよ急に」


 真男を連れて自室に移動したオレは今、制服から中華服へと着替えている。オレが半裸になった瞬間、真男は吠えた。「良い顔と良い体しやがって!」「まるでギャグ漫画から出てきたようなビジュアル……って評価された、おれの気持ちが龍治には分かるかっ?」とか何とか色々キャンキャン吠えまくっている。


「ってか撮んなよ真男……」

「さすがに撮らねーよ! 撮ったって、晒す場所もねーし! もし晒したら色々おっかねーことになるのは間違いなし……」

「その撮影したやつを、一生お前がずうぅーっと眺めているっていう……とてつもなくキモい展開も十分に考えられるアル」

「そんなことするもんかっ! バカ野郎!」

「いやいや。お前なら、やりかねないアルよ哈哈哈」

「……お前がおれにアルヨロシを付けて話すのって、大体おれをバカにするときだよな……。めっちゃ胡散臭さが出ているから、おれには分かるぜ」


 呆れながらも、まだ胡座をかいてオレの着替えシーンを見続けている幼馴染みを、オレは哈哈哈と笑ってやる。


「いやしかし、お前はイケメンだよ龍治」

「そんな褒めたって何もやんねーよ」

「ただし、もれなくイケメンの上に『残念な』が付いてくる!」

「うわぁ……いらねぇよ、そんな余計な言葉」

「余計なのは、お前のアルヨロシの方だろうがよ」

「……はいはい?」

「だからさー、その中国人らしさ? を意識したような喋り方をやめれば、お前はモテるんだって! なーんか電波系なんだよなー。不思議ちゃんっぽくて、それが龍治からモテを離しちゃっているっつーかさぁ……」

「ふーん」

「うーわ、全然興味なさそっ! 何だ、その余裕アリアリな感じ!」

「ほあぁ……」


 真男が「欠伸すな!」とツッコんだのと同時に着替え終わったオレ。そんなオレを見たアホの生田の口は、


「あーあ。ほんっとに、イケメンですこと!」


 止まることを知らず。


「そりゃどーも」

「雑! さては言われ慣れてんな、師範代!」


 オレは「さっきからうるさっ」と言いながら、ドカッと真男の隣に座る。


「ケッ! 普段から、こーんなクセ強いファッションしやがってよー」

「個性的、な?」

「コスプレじゃなくて私服ガチだもんなー。そりゃカンフーするときは必需品だけどさ。似合っているし」

「いちいちオレを下げたり上げたり、お前は忙しい奴だな」

「うっせ。そんで時にはタッセルピアスとか、ゴリッゴリのロック系なアクセサリーとかで飾ったりしてな! あと龍のイヤーカフとか……。髪は明るい茶色だしな~」

「哈哈哈。こんなチャラい師範代……オレ以外にいねーわな、きっと」


 残っているピアス跡を軽く触りながら、オレは自虐的なことを吐いた。ついでに髪も、クシャっと軽く撫でる。


「でもオレはオレらしい生き方を、やめるつもりはないね。自分らしさを捨てるなら……この世界で自分らしく生きられないなら、オレは死ぬよ」


 言い切ったところでハッとしたオレが横を向くと、そこには目をギンッ! と開いて固まっている幼馴染みがいた。


「おいおい……。そんなムキになんなよ」

「哈哈哈」

「お前が死んだら、おれ嫌だよ……」

「……対不起ドゥイブチー……」


 オレは照れ臭くなって、つい中国語で謝ってしまった。すると何かを察したかどうか分からないが「でもよー」と真男が話を始めた。


「お前さっき……あの花世さんと喋っているときは出ていなかったな、アルヨロシ」

「……まあ、初対面だしな」

「そうかぁ~? お前そんなこともねーぞぉ? 結構、初めましての人にもアルヨロシで喋ってっと思うぜ~?」

「そんなこと知らーん」

「……クセが強過ぎてモテ期を逃し、7歳年上のお姉さんを巧く魅了したイケメン」

「何だそりゃ、なげーよ。しかも、どっかで聞いたことある言い方……」


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