(十)出会って間もなく「どう思うか」と聞かれても……。
花世ちゃんは、なぜこの道場に入門しようと思ったのだろう。
カンフーに興味を持ったきっかけは?
働いている身?
学生?
それから、それから……。
「年上の女性は、ロマンだずぇい」
「ほあっ! お前、いつの間に……」
オレだけしかいない部屋で花世ちゃんについて色々と考えていたら、急に真男がヌッと出てきた。
「今来たばっかだよ~」
「ほあぁ~……不法侵入アルか。やれやれ……お前なんかに、一本取られるとは。この道場のセキュリティについて、いよいよ考え直すときがきたアルね。アイヤー」
「いや、するわけねーだろ! ちゃんとママさんに入れてもらったんだよ!」
「アイヤァ」
「おやまぁ、みたいに言うなし!
「いやいや、それは合っているアル」
「あっそーですかっ! おれは中国語、わっかんね! っつーか……おれ、お前の家に行くって約束したじゃねーかっ!」
「哈哈哈。随分うるさ長い台詞アルね」
オレによりツッコミ人間と化した真男を軽く笑う。そうそう、こいつは家に来る予定だった。
「……で、どうなんだよ? 龍治」
「はいはい?」
真男はオレにいじられたことなんて忘れたかのように話題を変えた。この野郎……。
「ママさんの隣にいた、お姉さんのことだよ。どう思ってんだ、龍治?」
「お前……マジで品がないな」
真男は花世ちゃんのことをバッチリ見ていたらしい。いや花世ちゃんが年上だと知っているということは……まさか。
「そりゃ抜かりの間違いだろ。しっかり聞いてい……いや聞こえていたぜ、お前らの会話。まあ仕方ねーだろ。おれはママさんに『ごめんね真男くん、ちょっと待っていてね』って言われて、玄関先で待たせてもらっていたんだからよ」
オレは花世ちゃんとの会話に夢中で、こいつが来たことに全く気付いていなかったのだ。
「お前……まさか母ちゃんの側にいた、あのお姉さんと話したのか?」
「いやいや、話とか全然してねーよ? あ、どもって感じで会釈しただけ」
「ほあぁ~……それは良かった……。お前の下品な振る舞いのせいで、この道場に彼女が来てくれなくなったら困るアル」
「おれのこと何だと思ってんだよ、おめーは! さすがに初対面の人に、そんなことするわけねーだろーがよ!」
「初対面の人以外にも遠慮するヨロシ」
「ケッ!」
「哈哈哈。どう思うも何も、オレだって彼女とは初対面! とりあえず入門者が来てくれたのは嬉しいってことだ!」
「何だその当たり障りない、つまんねー答えはよー」
「立派な模範解答アル!」
気になる存在ではある……なんて今の時点で誰にも言うもんか。
「とにかく、やるべきことをやろう。お前は大事な目的があって、ここに来たんだろ?」
「そうだよ」
「じゃあ場所を変えるぞ。オレだって着替えとかしたいし」
「うん」
オレは真男を連れて退室した。今ごろ花世ちゃんと母ちゃんは大事な話をしていると思われるので、2人の邪魔はせずに静かに移動した。
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