第53話 魔導大祭6 カシアナ・アイスヴェインVSぺスティス・ナイトシェード1[魔導大祭編]

 決勝トーナメント3戦目が始まる。今回の対決は、カシアナ・アイスヴェインとペスティス・ナイトシェードという名門家同士の戦いだ。どちらが勝ってもおかしくない。


 カシアナ・アイスヴェインは、高飛車な妹オーロラと正反対のような性格だ。優しく明るく自信に満ち、ユーモアたっぷりの性格で、人気が高く、親衛隊の数も多い。強い女性はやはり魅力的だ。一方、ペスティス・ナイトシェードは表では礼儀正しいが、裏では非道な行いをすると噂される暗殺一族である。関わりたくない相手だ。暗殺一族ゆえの宿命かもしれない。


 「セレナちゃん、どっちが勝つと思う?」と俺が聞くと、セレナは少し怖がった様子で答えた。

「うーん、どっちが勝つか分からないけど、カシアナさんに勝ってほしいな。ペスティスってシルヴァス・ナイトシェードの兄でしょ? シルヴァスの試合が怖かったから、ペスティスも怖そう……」

「そうだね。ナイトシェード家は裏社会の人間だし、危ないよ。関わりたくないよね。僕もカシアナさんを応援する!」

 と俺は賛同した。

「うん! 一緒に応援しようね!」と

 セレナちゃんが微笑んだ。


 すると姉が割り込んできた。

 「弟よ、私には聞かないの? 悲しいな、お姉ちゃん泣いちゃうよ」

 と偽泣きを始める。

「姉貴、どっちが勝つと思う?」と聞くと、彼女は偽泣きをやめ、

 「そりゃカシアナ・アイスヴェインでしょ。ナイトシェードには勝ってほしくないよ」

 と当たり前のように言い放った。


 選手入場が始まった。まずペスティス・ナイトシェードが入場。弟シルヴァスより多くの声援を受け、女性ファンからプレゼントが投げられている。噂通り一部で人気のようだ。次にカシアナ・アイスヴェインが入場。彼女への声援はペスティスを圧倒し、プレゼントの量も桁違いだ。男性ファンだけでなく、「きゃー、カシアナ様!」と女性の声も響き、彼女の人気ぶりがうかがえる。


 「ペスティスさん、私は負けないよ。アイスヴェインの名にかけて」

 とカシアナが宣言。

 対するペスティスは、

 「私もナイトシェード家の暗殺貴族としての誇りがある。負けるわけにはいきませんよ、カシアナさん」

 と丁寧に応じた。

 両者の礼儀正しい口調からは、負けられない熱意が伝わってくる。

 

 「それでは早速行かせてもらいますよ」

 とペスティスが言い、数十秒の詠唱の後、

 「ヴェノム・ネザーレイン・オーバーロード!」

 と唱えた。姉が驚く。

 「シルヴァスが最後に使った魔法をいきなり!?」

 アズルナも

 「序盤からこれは面白そう! でもカシアナちゃんに勝ってほしいね、ご主人様!」

 とアズルナ興奮気味だ。


 毒の雨がカシアナを襲う。カシアナは即座に

 「クリスタルウォール・ブリザードガード!」

 と唱え、氷の壁で毒の雨を防ぐが、完全には防ぎきれず、毒が彼女を蝕む。苦しみながらもカシアナは詠唱を続け、数十秒後、

 「アブソリュート・ゼロ・フローズンドメイン!」

 と叫ぶ。


 観客席から「カシアナ様のアブソリュート・ゼロ・フローズンドメイン!」「序盤からこんな魔法、すごい戦いになるぞ!」と歓声が上がる。

 戦場が凍りつき、毒の雨や雲すら凍結する。しかし、防ぎきれなかった毒がカシアナを苦しめる。それでも彼女はさらに詠唱を重ね、

 「クリスタルセラピー・オーロラヒール!」

 と唱える。青いオーロラのような光がカシアナを包み、毒と傷が癒され、顔色が正常に戻り、動きが軽やかになる。


 その様子にペスティスは

 「くそっ、生意気な!」

 と取り乱す。

 そして数十秒の詠唱後、

 「この魔法はどうですか、カシアナさん!」と叫び、

 「トキシン・ソウルエコー!」

 と放つ。

 カシアナの様子がおかしい。彼女は突然泣き出し、過去のトラウマに苛まれるさいなまれる。セレナちゃんが心配そうに言う。

 「これが毒魔法の精神攻撃だね…。過去の嫌な記憶を見せられてるのかな。やっかいだ。カシアナさん、勝てるかな?」

 観客席からオーロラの声が響く。

 「お姉様! あの時の約束を思い出して!」

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