第50話 魔導大祭3 オーロラ・アイスヴェイン2[魔導大祭編]

「アブソリュート・ゼロ・エンド!」

 オーロラ親衛隊がまた騒いだ。

「またオーロラ様のアブソリュート・ゼロ・エンドが拝めるとは、生きててよかった! もう死んでも悔いはない!」

「お前、まだ10代だろうが!」

「そうだった、てへぺろ!」


 そして、別の観客が言った。

「見て見て、風の精霊シルフが凍っていく! 風の精霊まで凍らせるなんて、オーロラ様、さすがだわ!」

と興奮していた。


 セレナちゃんの足元も凍っていく。負けじと、セレナちゃんも詠唱を始めた。


 また一人の観客が言った。

「このままだとオーロラ様の勝ちだぜ。あのエルフの子、どうするんだろ? でも、まぁ、オーロラ様相手によくやったと思うぜ。」


「セレナちゃん、早く魔法を唱えないと全身凍ってしまうよ!」

 俺は思わず叫んでいた。そして、セレナちゃんの肩まで凍りついたその瞬間、

「ストーム・トランセンダント!」

 と唱え、

「これで終わらせる!」

 とセレナちゃんが叫んだ。


 場の雰囲気が一変した。禍々しく、死の恐怖を感じるような嵐が吹き荒れる。

 これがストーム・トランセンダントか。自身が嵐の化身となり、動くだけで大量の巨大な竜巻と落雷を発生させる。さらに、魔法攻撃をほぼ無効化する。


 観客の一人が言った。

「ストーム・トランセンダントを生徒が使うなんて、初めて見た! これは、ひょっとすると逆転があるかも!」


 アズルナが興奮気味に言った。

「移動するだけで巨大な竜巻や落雷がバンバン発生して、めっちゃ面白いですね!」

 ラミッサが叫んだ。

「セレナちゃん、頑張れー!」

 俺も負けじと叫んだ。

「セレナちゃん、頑張れー!」


 セレナちゃんが動き回ると、竜巻と落雷が次々に発生し、オーロラを襲う。通常の竜巻や落雷とは比べ物にならない魔力量で、オーロラですら耐えられないんじゃないかと思った。そして、アブソリュート・ゼロすら無効化していた。セレナちゃんの魔力量、すげえ…。改めてセレナちゃんの凄さに驚いた。


「私だって、やるときはやるんだから!」

 セレナちゃんがそう言いながら動き回り、竜巻と落雷を大量に発生させる。だが、オーロラも黙ってはいない。防御魔法を複数唱える。アブソリュート・ゼロを無効化された以上、竜巻を凍らせるのは諦めたのだろう。そして、その防御魔法すら破壊するほどの竜巻と落雷だった。


 観客の一人が叫んだ。

「こりゃ、ひょっとすると逆転もありえるぞ!」

 時間が経つごとに竜巻はどんどん強力になり、ついにオーロラのすべての防御魔法が剥がされ、竜巻に飲み込まれた。すると、セレナちゃんはストーム・トランセンダントを解除し、オーロラは地面に叩きつけられた。幸い、衝撃で意識が戻ったようだ。


「勝者! セレナ!」

 アナウンスが流れた。そして、

「セレナ! セレナ! セレナ! セレナ!」

 と客席からコールが響き続けた。


 ルビルナも言った。

「セレナ、なかなかやるじゃん。」

 普段素直じゃないルビルナの口調が、ここまで変わっていた。

 セレナちゃんがオーロラに近づき、

「大丈夫? 怪我してない?」

 と手を差し伸べた。


 そしてオーロラが答えた。

「大丈夫よ。あんな大口叩いた私に優しく接してくれるなんて、セレナちゃん、素敵! 私と友達になりましょう!」

 そう言って、心を入れ替えたように微笑み、セレナちゃんの手を取った。


 そして、実況が突っ込んだ。

「オーっと、あのオーロラ・アイスヴェーンが友達を!?」

 いつも興奮気味の実況が、さらに熱を帯びていた。


 ラミッサが興奮して言った。

「オーロラさんとセレナちゃんの百合が見れるんですかね、旦那様!」

 鼻息を荒くしながら身を乗り出した。


 レティも続けた。

「セレナちゃん、強いとは思ってたけど、あのオーロラ・アイスヴェーンを倒すなんて、めっちゃ強かったんだね…。」

 そして、小声で囁いた。

「セレナちゃんを怒らせちゃダメよ、ヴェス。怒ったら、とんでもない魔法使うかもだから。」

「わかってるよ。」

 俺も心に刻んだ。セレナちゃんをわざと怒らせるつもりはないけど、気をつけて過ごそう。


 そこへレーザー先生がやってきて言った。

「セレナちゃんがあのオーロラ・アイスヴェーンと友達に!? やるねえ! さすがうちの生徒だ! やっぱり私の指導の賜物だな、がっははは!」

 そう言い、「あ、仕事が」と去っていった。

 そして、早くもセレナちゃん親衛隊が結成されていた。

「ここにセレナ様親衛隊の設立を宣言する!」

 と一人の男が叫び、親衛隊たちが盛り上がっていた。


 こうして、セレナちゃんの1回戦が終わった。まだセレナコールが響き続けていた。


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