妖精がこの国にやってきたらしいが、俺はそれよりトリの降臨が気になって仕方がない

とっぴい

妖精がこの国にやってきたらしいが、俺はそれよりトリの降臨が気になって仕方がない

『妖精がこの国にやってきた』


 俺は、そんな噂をいつもの酒場で聞いた。


 まず、妖精はかなり珍しい種族である。

 羽が背中についていること以外は人間とそう大差ない容姿らしいが、本当のところがどうなのかは知らない。

 普段は妖精界とかいうよくわからないところに引きこもっているから、現世この辺では滅多に見ることが出来なからだ。


 そんな妖精がこの国にやってきた。

 本当の事ならばかなり珍しい事態だ。

 普通なら、この噂話をしている男達の会話に耳を傾けてべも噂の真偽を確かめるべきだろう。


 しかし、俺はそんなことに耳を傾けている場合ではない。

 なぜなら、今日はトリの降臨がある日だからだ。




 トリの降臨、それはこの国で百年に一度あるとされる行事(?)の名前だ。

 俺も詳しいことは知らないのだが、どうやら『トリ』という魔物をこの世に降臨するというものらしい。

 俺はその『トリ』が普通の鳥とどう違うのかがとても気になっている。

 それこそ、妖精がこの国に来たという噂の真偽を確かめるよりも。


 だけど、あいにく俺はそれが何処で行われるのか知らない。

 知り合いにそう言ったら鼻で笑われた。

 実際自分でも致命的だと思う。

 だから、とりあえずこの街で一番高い丘にやってきている。


 ここなら街で大きな変化があったらすぐに気づけるからだ。

 トリの降臨が俺が思うものよりも規模が少なかったら見ることが出来ないことが確定するのだけど。







 三時間が経った。

 トリの降臨どころか、街で何かしらの騒ぎが起こった様子すらない。

 どうして……


 もしかしたら日付が間違っていたのかもしれない。

 心がズタボロになりそうな俺はそう結論付けた。

 そうとでも結論付けないとやってられないのだ。


 ということで明日もこの丘に来ようと思う。

 そうして、俺は立ち上がって丘を降りようとした。




 その時、背後からポンという音が聞こえた。




 思わず後ろを振り向くと、そこには鳥のような何かが俺の方を向いて突っ立っていた。


 普通の鳥にしてはサイズが大きい。

 しかもなんだか横幅が心なしか大きいような気もする。

 まさか、これがトリの降臨で現れるというトリ?


 確かに普通の鳥と比べてサイズも大きいし、区別をしてもいいとは思うが……


「トリー!」


 なんだこいつ。

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