酔っ払いの呪文で世界滅亡ルート入りました

猪木洋平@【コミカライズ連載中】

第1話

 ――気がつくと、俺は迷宮の入口にいた。


 目の前には巨大な石造りの門がそびえ立ち、「妖精迷宮」と刻まれた看板がぶら下がっていた。左右には妖精たちがたむろしている。彼らがこの迷宮の管理人か?


「ようこそ、旅人よ! ここは妖精迷宮。試練を乗り越えた者には莫大な財宝が与えられるぞ!」

「ただし、途中でリタイアしたら魂をいただくよん」


 なんだそのブラックなルールは。いや、そもそも俺はなんでここにいるんだ?


 記憶を遡る。……そうだ、昨日の夜、酔っ払った勢いで「テケリ・マケリ・ピヨライズ! フワフワ、ボワワワ、コケコッコー!! さぁ、トリの降臨だ! ギャハハハ!」とか適当な呪文を叫んだ気がする。あれのせいか? いや、それとも単純に酔っ払ってここに辿り着いただけか?


「さあ、挑戦するかね? 時間がないぞ!」

「やるなら早くしろ! やらないなら魂をよこせ!」


 いや、どっちにしろ詰んでるんだが!?


 選択肢もなく、俺は強制的に迷宮へ突入させられた。


 しばらく歩く。そして、重々しい扉を開けると――


「ヒャッハー! 新しい挑戦者か!」


 中から大勢のオークが飛び出してきた。斧を振り回しながら、俺の命を狙っている。


「待て待て! ちょ、いきなり過ぎるって!」


 俺は慌てて逆走しようとするが、背後の扉は消えていた。詰んだ。


「死ねぇええ!」


 オーク軍団が迫る。もうダメだ、と思ったその時――


 バサバサバサッ!!


 突然、巨大な鳥が降臨した。


 黄金に輝く翼、燃え盛る炎の尾。目からはビームでも放てそうな雰囲気だ。


「――ふむ、興味深い」


「え? 誰?」


「我か? 我は“終焉を告げる大いなるトリ”なり。たまたま通りかかった」


 たまたま通りかかるレベルの存在じゃないんだが!?


 トリが一鳴きすると、オーク軍団が一瞬で蒸発した。


 ……圧倒的すぎる。


「いや、たまたまというのは正確ではないか。昨晩の貴様の声に導かれたのだ。我と貴様は、運命で結ばれている」


「運命とかいいから俺は普通に家に帰りたいんだが……」


「ダメだ。我は貴様を主と認めた。共にこのダンジョンを、そして世界を滅ぼそう」


「待て待て待て!!」


 抗議も虚しく、トリは満足げに羽を広げる。


 どんな未来が待ち受けているか、もはや想像もできない――。

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