妖精のいる部屋
口羽龍
妖精のいる部屋
林慶太(はやしけいた)は先日、高校を卒業したばかりで、来月から大学生活に入る。大学生活は独り暮らしで、不安ばかりだ。だが、一人で暮らす事によって、人は一人暮らしをして、成長していくものだ。なので、それは大切な事だろうと思っている。だが、初めての事で、本当にやっていけるのか不安だ。
慶太は今日から住むアパートの前にやって来た。そのアパートは少し古びているが、清潔感がある。ここは通う予定の大学に近く、そこそこ安い。セキュリティも万全だ。
階段の前には大家が待っている。慶太を待っているようだ。
「あっ、今日からお世話になります、林慶太です」
「よろしくね」
大家は部屋に案内した。部屋は2階にあるようだ。大家はとてもやさしそうな表情だ。すぐに仲良くなれそうだな。
大家はとある部屋の入り口で止まった。ここのようだ。
「ここだったな」
大家は部屋を開けた。すでに引っ越し業者が荷物や家財道具を入れていて、家財道具はすでにセットされている。荷物は段ボール箱に入っている。
大家は扉を閉めた。ここからが大変だ。荷物を開けて、いろんな場所に収納しないと。
「ここで暮らすのか。不安だな」
慶太は段ボールを開け、荷物を本棚などに収納し始めた。引っ越し仕立てって、こんなに大変なんだな。今まで両親がやってきた事を、自分は眺めるだけだったが、今度は自分が実際にやる事になった。自分でやってみると、とても大変なんだな。
「大変だ大変だ」
と、電話が鳴った。誰からだろう。母だろうか?
「もしもし」
「慶太、新しい家の住み心地、どう?」
母だ。慶太を心配して、電話をかけてきたようだ。慶太は安心した。変な電話でなくてよかった。変な電話だったら、どうしよう。
「いいけど」
「よかった。大学での生活、頑張ってね」
母はほっとした。何かと不安だと言っていたけど、ここでやっていけると思ってるようだ。これで一安心だ。
「うん」
電話が切れた。慶太は再び荷物の収納を再開した。まだまだ1割しか進んでいない。今日までに終わらせたいと思っているが、本当にできるんだろうか? 不安になってきた。
「初めての一人暮らし、大変だな」
だが、思った以上に進み、夕方には終わらせた。ちょっと疲れたな。今日は頑張ったから、晩ごはんは外食にしよう。この近くにファミレスがあったみたいだから、ここに行ってみよう。
慶太はファミレスにやって来た。ファミレスには多くの家族連れがいる。彼らはとても楽しそうだ。それを見て、慶太は思った。自分も彼らのように、家族を持ち、家を支えていくんだろうな。誰と結婚して、どんな子供をもうけるんだろう。まだわからないけれど、きっとかわいい妻を設けるだろうな。
慶太はファミレスから帰ってきた。外はすっかり暗い。そして少し寒い。だが、先月ほど寒くはない。そう思うと、直実に春は近づいているんだなと感じる。
「疲れたなー」
慶太は今日の疲れが残っていた。今日は引っ越し先への移動や、荷物の収納で疲れた。明日からは大学の入学式までのんびりしよう。どんな大学生活になるかわからないけれど、充実した4年間になるといいな。
「テレビでも見てのんびりするか」
慶太はテレビをつけた。テレビでは、バラエティ番組がやっている。とても面白いが、慶太は全く興味がない。受験勉強が始まる前は、よく見ていたのに、始まると全く見なくなった。どれもこれも大学受験のためだった。絶対に気を抜いてはならなかった。でも、受験が終わった今、ようやく解放された。
と、慶太は何かの物音を聞いた。とても小さいが、確かに聞こえた。
「ん? 何だろう」
慶太はカーテンを開け、外を見た。だが、そこには誰もいない。見えるのは都会の夜景ぐらいだ。その都会の夜景を見て、慶太は思った。いつかあの夜景が良く見えるスポットに行ってみたいな。それはどこにあるんだろう。
突然、慶太の目の前を何かが横切った。何だろう。慶太は首をかしげた。
「あれ?」
その時、慶太の前に虫の羽の生えた小さな女が現れた。妖精だ。まさか、このアパートには妖精がいるのか? そんなアパートがあるんだな。
「よ、妖精?」
慶太は驚いている。まさかいるなんて。
「そんなのがいるなんて・・・」
「驚いた?」
妖精は笑みを浮かべた。慶太と仲が良くなりたいと思っているようだ。慶太は少し戸惑っている。
「うん・・・」
「まさかいるとは思わなかったでしょ?」
「うん」
慶太はそわそわしている。引っ越して初日、妖精に会うとは。とても信じられなかった。
「今日からよろしくね」
「よ、よろしくお願いします・・・」
慶太は腰が抜けている。引っ越した初日から、とんでもないものを見てしまったな。
「よかった・・・」
慶太は時計を見た。そろそろ寝る時間だ。もう寝よう。
「もう寝よう・・・」
慶太は部屋の電気を消して、ベッドに横になった。明日からはインターネットをしたり、大学の勉強をしよう。
翌朝、慶太は目を覚ました。昨日は荷物の収納に妖精との出会いに大変だったけど、今日は平凡な1日であってほしいな。
「はぁ・・・」
慶太は寂しさを感じていた。音と今では当たり前のように会った両親の姿。だが、ここに両親はいない。とても寂しいけれど、成長していかなければ。
「寂しいな・・・」
慶太は机を見た。机には参考書がある。読んで頑張らないと。
「勉強でもしよっか」
慶太は読み始めた。だが、わからない事ばかりだ。慶太は頭を抱えてしまった。
「うーん・・・、難しいな・・・」
「大丈夫?」
突然、何かの声が聞こえた。誰だろう。慶太は辺りを見渡した。そこには昨日の妖精がいる。まさか、今日も出会うなんて。どうしてここに入ってきたんだろう。慶太が大好きだからだろうか?
「えっ!?」
「勉強、手伝おうか?」
妖精が勉強を手伝おうと言ってきた。まさか手伝ってくれるとは。
「い、いいけど」
慶太はなかなかわからない所があった。慶太はそこを指さしている。
「ここわからないんだよなー」
「ここは、こうするの」
と、妖精はいつも簡単に解いていく。この妖精は頭がいいな。
「ありがとう。よくわかった」
慶太は思った。ここならうまくやっていけそうだ。だって、大学に近いし、このアパートには妖精がいるから。
妖精のいる部屋 口羽龍 @ryo_kuchiba
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