後半

桜といえば、お花見。花より団子という言葉もあるけれども私は花よりお弁当というタイプだった。

しかしここには桜がいかに恐ろしい花であるかをつらつらと書き連ねられていました。


読んでいくと出てきたのは1人の山賊、彼も例に漏れず桜が気味が悪いと考えていたようで、

なぜかというと風がないのにゴウゴウと音が鳴る感じがするから。

山賊なのに案外可愛らしい理由だなと思ってたら、そこを読んだ時ふとしんとした周りに急に意識が戻ってくる。

その時、周りの世界が全て消えてしまったかのような感じがしているけど、本当は近くを通る電車の音が聞こえている。という不可解な感覚を感じた。

確かに気味が悪い、山賊さんごめんなさいと心の中でつぶやいて読み進めることにした。


山賊は手頃な夫婦から妻を奪い取り自らの妻とし、その数はすでに7人となっていました。

そしてその日の彼も同じことをしようとしましたが、その日はいつもと勝手が違いました。

その女性はあまりにも美しかったのです。

その非常識な美貌に惚れた男は生かそうと思っていた彼女の夫を思わず切り捨ててしまいました。


中々に可哀想な奥さんではありますが、この女性は思っていたよりも肝っ玉が座っているようで腰が抜けたからおぶれ、さもなくば舌を噛んで死ぬと言い出し、山賊も自分の支配している山を自慢しながら彼女を背負って山道を登っていきます。


山賊は女性の顔を少しだけでも見たいといいますが、嫌よ嫌よと見せてくれず、逆に首に巻きついてきます。家に帰るまでの坂を必死におぶりながら走らさせられる山賊の頭の悪さが少し愛らしく感じました。


しかし恐ろしいのはこの後、女性が初めて彼の昔の妻たちと顔を合わせた時顔が一番醜い女、ビッコの女を召使にすると言って残して他を全員夫である山賊に殺させてしまいました。

愛らしいと思っていた山賊が妻とした女性を軽々しく殺してしまうところが途端に恐ろしく感じた、小説の中は登場人物の死であって現実よりも死の価値が軽い。

そこに本当の命は無いからだ。だからこそ、小説家はその命に、死に、劇的な意味や価値を見出すのだと。そう考えていた。

山賊は私のその考えをダンビラでバラバラに切り裂いてしまいました。


女性は大変わがままでありました。山賊が以前は十日に一度しか食べなかったようなご馳走でさえも、都会から来た私の喉は通らない!と怒りたした。

しかし山賊にとって都など、ねぎを背負ってくる鴨の如く金品や装飾品を持ってくる金持ちのいる場所という認識でしかありませんでした。

彼にとっては彼女に自分が最も幸せになる事をしており、それ以上の事など彼にはする方法がありませんでした。


女性はわがままではありましたが、大変美しく彼は着物や簪などで完成するその一つの美しさの魔力に山賊はすっかり魅了されてしました。

彼女のために木の椅子を作り、自らがその美しさを生み出す助手であることにある種の達成感を感じでいました。

しかし、それと同時に都を知らぬ恥ずかしさと不安から都への恐怖を抱いていました。


知らぬ恥ずかしさと不安から恐怖を抱く、それを見た時に山月記の李徴を思い出した。

彼が胸の内で飼い太らせた尊大な羞恥心に支配されて虎になったあの話は私の好きなお話の一つでもある。


彼はその後女性の言うことを聞いて都に行こうとしますが、桜の開花である三日後まで待って欲しいと頼みました。

女性は誰もいないのに彼が桜の下に一人で行かねばならないと言う約束をしたことに苦笑をしましたが、その笑いは彼の心に切っても切れない刀として残り続けました。


山賊は夜更けに抜け出して桜の下へと行きました。果てのない四方の闇には満開のピンクのカーテンが降りていました。そこには、虚空がありました。彼は逃げました。妻と子を置いて発狂し虎となった男のように。


一旦一区切り、として私は付箋をつけて本を閉じると冷蔵庫にしまってあった牛乳を飲み、ルマンドとチョコチップクッキーを食べる。

私は花粉症なので春はあまり好きではないけれど、桜の綺麗さは十分に知っている。だからこそそれを怖がっていた人達の気持ちは考えてみてもあまり分からなかった。


彼ら、山賊と女とビッコの女の三人は都に住み始めると女は山賊に指定した家に金品を盗ませ、その家の住人の首を持って来させました。

そして数十となったその首で人形遊びの様な事をするのです。

それが白骨になろうともこれは誰それの家族、と場所まで指定して動かすと大変怒るのです。

女は僧の首を悪役に見立て遊びました。

醜い僧の首を特に気に入り、自分の乳首をしゃぶらせて大笑いすると言うなんとも頭のネジが飛んでいる行動をしたそうですが、じきにあきたそうです。

美しい姫君の首と二人の美青年との激しい恋愛を楽しんだり、とても幸せであったのでしょう。


彼は違いました。彼は都の生活に慣れることができず、皆々が軽蔑の目で彼を見ます。酒を飲むにも買わねばならぬ、昼間には刀も持てぬ。彼は退屈でした。

彼はビッコの女に山に帰ろうと提案しました。しかに彼女は都の生活が楽しいそうです。

女の欲は空を真っ直ぐに、ずっと飛べる鳥の様でした。

果てなき欲に疲れた彼は首を取りに行くことはキリがないと嫌がりました。しかし女はそれではご飯や寝ることもキリのないことだよと言い、説得する様に彼の考えを操って、彼はそれに言い返す言葉が浮かびませんでした。


彼はその後に近くの山に登り、数日彷徨いながら考えてもキリがなく疲れて眠ってしまいました。目が覚めると一本の満開の桜が目に飛び込みました。山に帰ろう。彼は決心しました。


女にそれを伝えると女は私を置いていくのかと怒りました。しかし彼はもう都では生きていけません。

すると女は彼についていくと言い出しました。さらには彼と首なら彼を選ぶと言い、彼はとてもとても嬉しくなりました。夢かと思いましたが、それは現実でした。彼と女はビッコの女にじきに帰ると伝え山に向かいました。


目の前には見慣れた山があり、旧道は人が通らず林となっていました。

女はこんな道を歩けない、おぶってほしいと言い彼は背負って歩き出しました。初めての日、彼らはかつての思い出を思い出しました。

歩いているとひらひらと桜が降りてきて、彼らは桜の森の満開の下にいることに気づきました。


ふと彼は女の手が冷たい事に気がつきました。女は、鬼でした。口は耳まで裂け、髪は縮れた緑色、全身紫色の老婆であると。

鬼は彼の首を絞めましたが彼は振り払い、鬼の首を絞めて殺してしまいました。

目は霞んでいました。見える様にと大きく目を開けた時、まだ霞んでいて本当のものが見えていると感じることが出来ませんでした。

そこで死んでいたのは彼の妻でした。鬼などではない。


男の全ては止まりました。帰る場所もありません。どれだけ泣いても女が戻る事はありません。

桜の森に風は吹いていませんでした。ただ花弁が散るばかりです。男は座りました、あるのは深い深い孤独です。頭上には桜が咲き誇り、あたりには無限の虚空がただ広がるばかりです。

しかし男には奥底の心、悲しみだけがありました。

妻の顔にかかった桜の花弁をはらおうとした時、もう女はいませんでした。男もいませんでした。

満開の桜の木の下には花弁と冷たい虚空が張り詰めていました。


全てを読み終わった私は深い考えに浸った。男のように。女は結局男が使えないと考えて山に連れて行き、首を絞めて殺そうとしたが殺されたのでしょうか。彼はそれを分かってもなお悲しかったかもしれません。いや、多分分かっていないでしょう。

本を閉じた時彼が最後に味わったであろう孤独の音が聞こえた気がして、また私は星野源の桜の森を流し始めた。




執筆が遅くなって申し訳ございません。

坂口安吾さんの桜の森の満開の下、とても面白い話でした。

ほとんど朗読のような形になってしまいましたが評価してくださった方々に感謝申し上げます。








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私の休日と坂口安吾 リアス @00000aoto

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