第7話 とあるハンター(南)の顛末

【スタービックス伊勢佐木町店】

「いらっしゃいませ~お一人様ですか〜って、み…南ちゃん!?…やべーなー」

八月はづきちゃんご無沙汰〜、バイトしてるって言うから見に来ちゃった〜…なんかヤバイの?」

「うう〜ん?なんでもないよ〜」


うん…さすがの対人スキルを発揮して、はづきちゃんは平然と応対を始めた。ものすごくなんかありそうなんだけど…この子は本当にそつがない。

なんだろう…良い獲物女の子がいるのかなあ…


どれどれ…っと、あっ!はっけ〜ん。


「ねえねえはづきちゃん…あの子誰〜?」

「…店長!…一見さんお呼びです〜」

「あらあら…ツレナイわね」

「南ちゃん、ご注文は?」

「アイスコーヒー」

「は〜い、アイス黒糖シロップラテとシュガードーナツいただきました〜」

「ちょっとちょっと!カロリー高っ!」

「ちょっとは肉を付けたほうが良いんだよ南ちゃん。痩せ痩せなんだから」

「はづきちゃんには言われたくないわっ。もう三十路みそじに入ってからは色々気をつけてるのっ!」


この子は〜本当に如才ない…落としがい…あるっ!

そうこうしているうちに向こうからやってきたのは…やだ〜清楚な美人ちゃん!


「はじめまして…この店の店長を務めております『花木はなのき』と申します」


う〜ん、『The清楚』って感じの子…佇まいも優雅…お茶の先生が巫女さんみたい…

でも…残念ながら処女…ではなさそうね…残念。


「店長〜この人「加藤 南」さん。パパの大事な人〜」

「…えっ?」

「嘘〜家族ともどもお付き合いのあるお友達〜」

「はづきちゃん!」

「ねえ店長…もうパパに告白しちゃったら?ばればれだよ?」


ふ〜ん?何となく分かってきた。

(はづきちゃんは分かってないみたいだけど。)


この店長さん…三月くんと関係があったな…現在進行系じゃなさそうだけど…というかはづきちゃんの前では付き合ったことがなさそうだ。昔の話か。

聡いはづきちゃんが気が付かないのは三月くんもうまく隠しているものだ。


「(う〜ん、この子、過去に三月くんを食らっているのか〜)」


三月くんのは立派だ。なんで知っているかの言及は避けるけど立派デカイだ。

この子アレを食らってなおかつ三月くんを求め続けているとしたら…こっちの世界レズに引き込むのは…


「(相当に難しいなあ…これはやっぱりはづきちゃんへの光源氏計画を発動するほうが…)」


その時だ…一人の女の子がはづきちゃんの前に…



「はづきちゃんおまたせ〜いやあスッキリした〜長々とトイレ占拠してごめんねえ」

「春ねえ!…そういうとこだよっ!…ったくもぅ…、せっかくの美人が台無しだよっ!」


…最高の…獲物来たあ!!


はづきちゃんのカウンターの前に座った女の子は、


「(どストライクっ!)」


20代の前半だろうか…澄んだ汚れのない瞳、気の強そうな美人顔、細っそりとした印象なのに出るところはバッチリのメリハリの効いた身体…しかも…


「(処女だわ…あれ)」


信じられない…あのレベルの女の子が処女!

世の中の男どもは何をやっているのか…ほんと好都合!!


「あれ?この方って、はづきちゃんがメールで写真を送ってきた美人さんじゃない?」

「え…え〜っと」


何としても手に入れる!…決意も新たに私はっ!


…ガシィ…っっっ…


「…へ?」


右肩に掛けられた華奢なのに力強いその手に思わず振り返ると…


「まあ!南ちゃんお久しぶりですわっ。お元気でらっしゃいました?」


悪魔が…悪魔むつきちゃんが、半分黒くなった単一職の瞳で…にっこりと微笑んでいた。


「(…おわった…すべて…)」

「え〜と、南ちゃん?今更だけど…むつきになんかしたの?」


絶望に染まった私に、悪魔と一緒にお店に入ってきた3才年下の馬鹿野郎な親友三月くんがのほほんと話しかけてきた。


…その笑顔…殴りたい!!



【加藤 南…悪夢の記憶】

あれは数年前、一月むつきちゃんがまだ中学2年生のころだった。あたしの新しい交際相手にあろうことかむつきちゃんのバスケットボール部の顧問の先生がいたんだ。

その時は入れ喰い状態だったので…遊びだった。

そこが不味かった。


悪魔むつきちゃんは信じられないような策を弄してきてあたしたちは完膚なきまでに別れさせられた。


「…南ちゃんが真剣交際だったら何も言わなかったのですけどね…この間の録音で「遊び」とはっきりおっしゃってましたわね」

「…」

「わたくしにはそれが許せませんの…」


コエエ…自分の半分くらいしか生きていないはずの小娘への…それがむつきちゃんへの正直な感想…


その上こいつ…恐ろしい秘密を共有していきやがった。あの日最後に捨て台詞を吐いた自分を殺したい!


「む…むつきちゃんあんた…そんな性格じゃ三月くんを手に入れるなんて夢の夢…」

「あら…わたくしは既におとうさまと将来を誓っておりますわよ?…聞きたいですか?」


ここで少しでも聞きたいと思ってしまった私のバカっ!!


「おとうさまはおっしゃいましたわ。私が学生時代にバスケットボールで全国制覇を成し遂げたら…その時は…わたくしの想う形で一生そばにいると」

「…結婚するの?そんなことは世間が…」

「そんなことでおとうさまを困らせるつもりはありませんわ。おとうさまが誰と結ばれても致し方ない…ただ…わたくしは一生そばにいて…一生おとうさまのを搾り取りますわっ!」

「…」

「…おとうさまは全国制覇そんなことは不可能だと思ってらっしゃるようですけど」


…うん、あの馬鹿三月くんは、そんなアマちゃんなコトを考えていそうだ…だけど…あんたの娘は!!


「言うまでもないことですが…わたくしは高校時代の終了までに必ず…やりとげますわっ!」


その…狂気にも似た一途な瞳を私は忘れないだろう…最恐の象徴として…


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