第6話 南ちゃんは実は近寄ってきていた
「…そんなに急いでどこにいくんだ?…春」
「…」
「今日、俺は本社に用事があるから、『
「…」
「なあ…春?」
「シャラップっ!」
「…」
本社に向かっている俺の横を何故かずんずんと歩いている春。
俺、あんまり業務と関係ない話で本社に行くんだけどなあ…こいつは何処に向かっているのだろう。
しかし
「…あっ!そろそろお昼ご飯ですよね。あたし、本社そばの『つばめグリル』でハンバーグ定食ゴチがよいです!」
「…春…てめえ」
何で今日はお弁当が無いことまで掴んでいるんだよ。うちのプライバシーってどこにあるの?
―
―
―
…と、食事を終えて本社に向かってみれば、何故か人事部の前まで春がついてきている。
『…はい、加藤部長への面会で、早見さんが13時30分、竹村さんが14時のお約束ですね。では竹村さんはこちらの部屋で待機を!』
「は…離せっ!襟根っこを掴むな秘書!ほ…細っこいくせになんて力…せんせ…三月先輩!ご一緒します!行かないで〜」
「…」
何故か俺と一緒に人事部長室に入っていこうとしていた春が秘書のお姉さんに拘束されて連れていかれた。
―
―
「相変わらず猪突猛進…変わらないね竹村くんは。君の下につけて本当に良かったのかね?三月くん」
「…逆に今のままでは、恥ずかしくって他の人につけられませんよ…おやっさん」
「久しぶりだね三月くん。さすがの営業成績は本社にも聞こえてくるよ」
未だ遠くで春の喧騒が聞こえる中、俺の眼の前には、おやっさん=加藤人事部長が微笑んでいた。
【早見三月メモ】
「で?…今日はお見合いの話かな?」
「はい」
「伺おうか」
「その件で、
「…それはまずいじゃないか」
おやっさんは当然、うちの
「おやっさん…なんで急にそんな
「何って、君の昇格の話が発端だよ。君、本社課長職に難色を示しているだろう。社長の耳に入ってしまったんだよね」
「それこそまずいじゃないですか」
「そうなんだよ。
期待はありがたいけど、今の生活では本社勤務は無理だ。星川の事務所勤務と特例のマイカー通勤は…それこそおやっさんの配慮の賜物だったんだ。
「…で、どうすれば良いですか?」
「うむ、普通のお見合いの形など取ろうものなら、流石の君も断りにくいだろう。それに君のところの優秀な
「ありがとうございます。…紹介の機会自体は存続されるのですね」
「まあ社長の顔もあるからね…それに」
「?」
「正直、君がその気になるのならば、それでも良いかなとは思っている…いい子だよ」
「…」
「社内的には、君が断ってお見合い自体が無くなったという情報を流しておく。それで良いだろ?」
「重ね重ねありがとうございます」
いい子か…おやっさんがおっしゃるなら本当にそうなんだろうけど…今は俺の中の一番を娘たちから外すつもりは無いんだ。
「…と、言うことで隣の部屋の猪突猛進娘はそのまま連れ帰って貰えるかね。どうせ君のお見合いの件への文句だろう。上手く伝えてくれ」
「はい」
「開かれた人事部アピールとやらで秘書はアポを受けちゃったみたいだが、正直気は乗らない」
「合点承知ですよおやっさん」
「別に君が
「…まあ…そうでしょうけどね…」
昨日のスタビでのあいつらの秘密会議はこれだな。
…春…お前、自分の会社の人事部長を何と心得ているんだよっ!
「今度は、
「はい!むつきもはづきも喜ぶと思います」
「南はそれとなく外しておくから」
…え?
「なんでですか?南ちゃんならあいつらも」
「この間、うちで珍しくはづきちゃんの写真を南が凝視していてな。何をしているか聞いたら」
「聞いたら?」
「『お父さん、源氏物語って改めて素敵な話よね…育成って本当に大事だわ』と…背筋が凍ったね」
…娘の
…さり気なく
「正直、それが無ければ、南と君の偽装結婚もありなんじゃないかと思っていたくらいなんだが」
「今の話を聞いてはとても南ちゃんをうちでは承りかねますね」
「うむ…ところで君のことだ…薄々気がついているとは思うが、竹村くんとうちの南は…やばい」
「…はい…
「引き続き警戒を頼むよ。さすがに我が社の社員を
その後…
「な!…なにするんですかっ先生…い…いや早見課長代理。せ…セクハラ…パワハラですっ!部長の差し金ですねっ!?ゴラァ!部長!勝負せんか〜卑怯だぞ〜」
という叫び声とともに廊下を引きづられていく美人社員の目撃情報が後を立たなかったとか…
―PS―
?「
色々と不味い爆弾がすでに飛び立っていた。
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