【短編/1話完結】妖精と太陽神と【KAC20253】

茉莉多 真遊人

本編

 これはまだ人間が誕生する前、神や妖精たちが地上に住んでいる頃の話。


「あはは」

「うふふ」


「待て! このイタズラ妖精ども!」


「待てと言われて待つやつはいないよ」

「待てと言われて待つやつはいないね」


 とある妖精2人はとてもイタズラ好きで、いつもほかの妖精や神を困らせていました。


「もっと、うーんとすごいイタズラをしようよ」


「もっと、うーんとすごいイタズラをしようね」


 あるとき、イタズラ好きの妖精2人が、太陽神を真っ暗闇の洞窟の中に閉じ込めてしまいました。


「こら! イタズラ妖精たち! 私を早く出さないと地上が大変なことになるぞ! 

太陽を呼べる私がいないと太陽が出てこないんだぞ!」


 太陽神は太陽を呼んで昼と夜を生み出し、さらにはほどよく太陽を呼んでいたために動物も植物も過ごしやすい春をずっと創っていたのでした。


 ですが、太陽神がいなくなってしまったことで、地上には太陽が昇らなくなり真っ暗闇が続いて、暖かさを失い、寒さで動物も植物も凍えてしまうような大変なことになってしまいました。


「うーん、困ったよ。太陽神を出せばいいけれど」


「うーん、困ったね。出したらきっと怒られるね」


「うーん、太陽神を出さなかったら」


「うーん、誰かに気付かれてきっと怒られるね」


「そうだ、代わりを呼ぼうよ」

「そうね、代わりを呼ぼうね」


 困ったけれど怒られたくない妖精たちは太陽を呼べる代わりのものを召喚することにしました。


 やがて現れたのは1羽のオスのニワトリです。


「トリの降臨!」

「トリの降臨!」


―っ!」


 召喚されたニワトリは太陽を必死に呼びました。


 そうでないと妖精たちに焼き鳥にされるからです。


 やがて、ニワトリの想いが通じたのか、太陽が顔を出すようになりました。


 ただし、太陽神が閉じ込められたままでも太陽は出るようになりましたが、ニワトリは太陽神ほど太陽を上手に呼べません。


 こうして、春のほかに暑い夏や寒い冬が訪れるようになりました。


 めでたしめでたし。


「いや、待て。私はどうなるんだーっ!? 出せーっ!」


 太陽神は今も地面の奥深くで怒っており、その怒りが大きくなった時、山から溶岩として太陽の力が溢れ出てしまうのでした。


 めでたしめでたし?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

【短編/1話完結】妖精と太陽神と【KAC20253】 茉莉多 真遊人 @Mayuto_Matsurita

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ