妖精、要請、養成

ぬまちゃん

KAC2025 第三回お題「妖精」

 今回も5点差で敗れたか──しかも、文章の読解で。

 『トリの降臨』部分の読み込みが不十分で、そこで得点差が開いたらしい、くそぉ。


 追いついたと思ったらまた離される。肩に手が届くと思った瞬間、すっと離れていく。俺の生涯のライバル、神代育子。

 あいつの一挙手一投足を見てると、体がかあっと熱くなって、どうにもたまらない。教室にだれもいなければ、思わず抱きしめてしまうだろう。

 そんなライバルを、じっと教室の反対側から見つめていると。


「またぁー、思い詰めてるんだから。太郎ったら」

「うるさい。おまえには、俺のこの気持なんか分らないよ」


 家同士が隣で、小さいころからの腐れ縁。まあ、幼馴染ともいう女子である林すずが、俺の後ろから抱きついてくる。すずの長い黒髪が俺の鼻にかかってる。コイツ、また徹夜でゲームして朝風呂だったろ。シャンプーの匂いがまだ強烈だ。


「またテストで負けたんだよ、あの才女に。しかも、国語の読解力で5点差だけな」

「ふーん、そうなんだ。でも、それだけでしょ? なら、太郎も十分最強じゃん。ぶっちぎりで学年のツートップだよ」


 後ろから抱きつきながら、すずは耳元で一応慰めの言葉をかけてくれる。へいへい、その心遣いうれしいねえ。でもさ、ツートップと言えば聞こえはいいが、万年二位の心の傷はどうしてくれるんですか。責任取ってくれるんですかねぇ。


「俺も、読解力をつけたいけど、どうしたらいいのか見当つかんのよ。お前、才女に聞いてきてくれるか?」

「え、そんなぁ。私みたいな、可愛いだけが取り柄のモブ女が、学年カースト最上位、生徒会長で学力トップの三つ編み黒縁メガネのお姉さまの、半径5メートル以内に近づけるわけないよ」


 でも、と指を唇に考え込む。


「あ、妖精の話を聞きたいって言えば近づけるかも」

「なんだ、養成って? 才女様は養成学校にも行ってるのか?」


 それ本気で言ってる? そんな感じで俺の目をのぞき込む。


「違うよ、彼女ファンタジー小説の妖精モノ書いてるんだ。カクヨムで」

「要請ものってなんだ、世界を征服しろとかか?」


 もうこれ以上しゃべるな、と俺の唇に自分の指をあてる。


「んもぅ。それだから太郎は、万年二位なんだよ!」


(了)



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