第11話

 強攻撃ブレイクは眉間目掛けて放ったつもりだったが、寸前のところで片腕でガードされていた。でも、その代わり片腕は失ったな。俺はすぐさま体勢を立て直し次の攻撃に備えた。


「グガァァァッ……!!」


 よし、硬直した。ならこの攻撃は避けられないだろう。無防備で俺の放つ全力攻撃はいくらグリズリーといえど耐えれないだろう。


 スバァァッッ!!


 立ち上がったグリズリーの腹に斬撃が入る。血を噴き出しながら大きくよろめき後ろに後退するグリズリーは最早戦意喪失気味に陥っていた。


「グググゥ゙ォォォ……」


 斬撃はまともに入ったが深手止まりか。

 体格的にも人間よりも遥かに大きく、防御力、攻撃力においても、はるかに人間より上回っているからな。

 おそらく防御力だけなら重騎士バロンなみか。加護を使っているとはいえ、このレベルだと息の根までは止めれないか、流石はグリズリーだ。


「だが、充分だ!!」


 もう一度放たれた斬撃は眉間を貫通してグリズリーを仕留めるには充分過ぎる威力だった。


「グゥォォォ……ォォ…ォ……!!!」




 ズゥゥゥゥ………ン!!



 前のめりに倒れ込み、そのまま動かなくなったグリズリー。殺気も消え、辺り一面、本来の静けさが戻ってきた。


「仕留めたか。俺のレベルが低かったとはいえ、戦士になってからの初めての強敵だったな」


「いやいや、明らかにおかしいよ」


「何がだよ」


「強さもそうだけど、普通あんなに突っ込んで攻撃したりしないでしょ。 距離を取って間合を計ったり、相手の戦い方を見たりして戦ったり普通するよね」


「あぁ。 そういうことか。 剣士だったら俺もそうしてただろうな。 ちまちま斬って盾で防いで、誰かと強力して。ルークとよくやってた戦法だ。 だが、今は戦士ウォーリアだ。 盾もないなら一撃で倒すくらいで懐に飛び込んで戦うしかない」


 今の俺にはグリズリーの突進からの気絶や、ポイズンクロー 毒(小)の状態異常攻撃は効かない。 そういったのに警戒する必要がない。気をつけるのは純粋に攻撃だけなのは精神的にかなり楽になる。


「無茶苦茶過ぎるよ」


「いや、この方法が本来の戦士の戦い方だろ。  肉を切らせて骨を断つ。みたいな?」


 横にいたリリィが俺のドヤ顔に呆れつつ。俺達はムルガ森林から帰る事にした。


 そして俺のレベルは9まで一気に上がったのだった。




 翌朝


「よぉ。 アルト昨日は楽しめたのか?」


 そう言って声をかけてきたのは親友のルークだ。 こうやって声をかけてくるって事はある程度俺の行動を何か知っての事だろう。

 リリスをちらりと見るが知らないと言った顔だ。まぁ、あいつが誰かと気軽に話すわけないからな。ルークが一人で探ってきたのだろう。


「何の事だ」


「とぼけんなよ。 グリズリー討伐しに行ったんだろ?」


 感が鋭いな。流石親友。こいつはいつも何かある時に感が鋭い。冒険をしてる時も、魔物に気付く早さも、道に迷った時も何かと頼りになる奴だったからな。


「よく分かったな」


「商人の息子の情報力を舐めるなよ。 俺も見たんだよ。 グリズリーな爪痕をな! ずりぃな、俺も連れてってくれよ」


「お前には相方がいるだろ。 俺には今リリスがいるからな」


「冷たいこというなぁ。 今度俺の相方のライアンを紹介してやるから、勇者様も紹介してくれよ。 見た感じ二人で行ったんだろ? お前ら案外上手くやってるな」


 う、こいつには上手くいってるように見えてるのか。確かにルークにはリリスの愚痴を一言も言った事がないから不思議だと思われてたんだろうな。


「まぁ、機会があったらな」


「絶対だぞ。 俺も勇者様の武勇伝聞きたいんだよ」


 そういえば俺もリリスの武勇伝を聞いたことないな。 今夜ゆっくり寝る時にでも聴いてみようと思いながら、二日目の野外演習を始めたのだった。


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