第12話
あれから野外演習も終わり暫く経った。
俺はルークが前に言っていた勇者を紹介するために、ルークの相方のライアンと一緒に四人で学食を食べに行ったのだが、これが酷い有り様だった。
少しだけでもリリスに喋ってくれと頼んでおいたのだが、いざ席についてリリスに声をかけても全く喋らず、挙句に食べ終わったらさっさと教室に戻って行ってしまった。
まぁ何となく分かっていた事だが、ルークの紹介が出来ただけでもよしとするしかないか。
「悪いルーク、ライアン。 リリスはいつもあんな感じなんだ。気を悪くしないでくれ。 それにあいつは無愛想で人慣れしてないだけなんだ」
「気にすんなってアルト。 勇者リリス・アストリアが始めからあんな感じなのは皆が知ってるからな。 一緒について来てくれただけでも凄いと思うぞ。 なぁライアン?」
「そうそう。オレっちも気にしていないからアルトも気にしなくていいぞ」
この自分の名前を独特な呼び方をするのはルークの相方ライアンだ。寮でルークと色々話している間に意気投合したらしい。普段は剣を使っているが、元々器用な奴らしく、斥候やら武術も使えるらしい。卒業したら冒険者になるとのことだ。
「なぁ、アルト。少しは友達できたか?」
「出来るわけないだろう。 俺も元々べらべら話す方でもないし。 しかもリリスまで隣にいたら誰も近寄ってこん」
この学園に来てもうすぐ一ヶ月が経とうとしているのに俺は一向に友達という友達が一人もいない。
それは俺にも問題があるとは思うが、リリスの影響も大きい。
始めにリリスが馴れ合うつもりがないと全員に話したからな。その影響で誰も話してこなければ近寄りもしない。
極めつけは俺もこの前のロードン・ガルドスとの模擬戦で派手にやらかした事だ。
ある意味二人揃ってこの学園では有名人になってしまっているのだ。
「だろうな、だろうな。 そんな事だろうとお前の代わりに俺達が作っておいてやったぜ?」
「何をだよ。 また変な奴に喧嘩売られるのはごめんだぞ」
ルークの横からライアンがニヤニヤしながら話し出す。
「アルトも女の子が好きと聞いていたからな。オレっち達が女友達を何人か作っておいたんだよ。
学園といえばやっぱり可愛い女の子との交流! 女子との交流がより学園を楽しくさせる。 鉄板だろ」
「なん……だと?」
持つべき者はやはり友だと俺はライアンと熱い握手を交わす。ライアンも俺のこの一ヶ月の苦労を汲んでくれたのかウンウンと無言で頷いてくれた。
「あそこの席で二人で飯を食っている女の子は分かるか? 赤髪のロングの可愛い顔立ちの背が小さい子がフィリア。 その隣の緑髪の胸が大きい子がアイシャだ。2人とも回復魔道士をやっている子だ。 おーい、フィリア、アイシャそっちに言ってもいいか?」
ルークが二人に声をかけると二人は頷き席を少し開けて準備をしてくれる。赤髪のフィリアも緑髪のアイシャも可愛いと美人でレベルが高い。
俺達は二人の席に移動するとルークは俺の自己紹介をしてくれた。コイツは本当にこういう何気ないところが凄い。俺には真似出来ないところだ。
「こいつは言わなくても知っていると思うけどアルトだ。 あの勇者の相方をやってる凄い奴だ。 少し無愛想にも見えていたかもしれないけど意外と話すと気さくな奴だから二人とも仲良くしてやってくれよ」
「俺はアルトだ。 勇者リリスと組んでいる。 アイシャ、フィリア今後宜しく頼む」
「知ってるよぉ。 学園では知らない人はいないくらい有名人だからねぇ。 勿論悪評だけど。 私はフィリア。 回復魔導士をやってるよん」
「私はアイシャよ。 同じく回復魔道士。フィリアとは寮のペアをやってるわ。 意外と近くで見るといい男なのね。 私達とも仲良くしてね」
そう言って二人は
この世界では普通に戦闘で人が死ぬ。
学園では死ぬ事は少ないが、一歩外に出て魔物と戦い始めると一つのミスで命を落とす事がよくある。 あの初級討伐対象のゴブリンでさえ集団で囲まれると危ないのだ。
そのおかげもあって仲間との交流を大切にする。
だから回復役の魔道士のこの二人はパーティーを組む時に命を繋ぐための重要な役割を持っている。
「そいえば、これからペアとは別々でパーティーを組んで対人訓練が始まるよねん。 もしかしたらこのメンバーと一緒になるかもねん?」
「お〜、そうだ。 やっと本格的なパーティー編成の対人訓練だよな。楽しみだよな。アイシャ、フィリアのどっちか俺達と組んでくれるとほんとにうれしいんだけどなぁ」
「俺っちも組んで欲しい。 是非二人ともお願いします!」
これからはリリィとは一旦分かれて本格的なパーティー編成の対人戦闘訓練が始まる。寮で同じ部屋、同じ授業なのは相変わらず変わらないが戦闘はパーティーのバランスが大事だからな。
これから本格的な授業が始まる。楽しみだ。
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