我が家にやって来たポメラニアン
梅竹松
第1話 可愛いポメラニアンがやって来た
わたしは子どもの頃、ペットを飼っている友だちにあこがれていた。
犬を飼っている友だち。猫を飼っている友だち。他にもウサギやインコやハムスターを飼っている友だち。飼っている動物の種類は様々だけど、みんなとても幸せそうにしていることだけは共通していた。
そんな彼らを羨ましいと感じ、自分もペットを飼いたいと思うようになるのは自然なことだろう。
家に帰れば飼い主によく懐いたペットが迎えてくれる――ペットのいる友人たちを見ているうちに、わたしはそんな生活にあこがれるようになったのだった。
だから当時のわたしはよく両親にペットをねだったものだ。
特に犬が好きだったので、可愛いワンちゃんを飼いたいと駄々をこねていたのを今でも覚えている。
もちろん最初は断られた。
理由は世話ができないから。
犬を飼うなら毎日エサを与えたり散歩したりする必要があるし、具合が悪そうな時は動物病院にだって連れていかなければならない。
さらに犬の場合は、毎年必ず狂犬病の予防接種を受けさせることが義務付けられている。
そうした理由で、両親は犬を飼うことに賛成できないようだった。
でも諦めずに何度も何度もお願いした結果、ついに両親の説得に成功。
白くてふわふわなメスのポメラニアンを誕生日にプレゼントしてくれた。
もちろんわたしは心の底から喜んだ。
ずっとあこがれていたペットのいる生活が今日から始まるのかと思うと、どうしても気分が高揚し大はしゃぎしてしまう。
わたしにとって最高の誕生日プレゼントだったため、その年の誕生日は特に印象に残る一日となったのだった。
それからわたしはまず我が家に迎えたポメラニアンに“ユキ”という名前をつけた。
毛の色が雪のように真っ白だったし、またその日は冬で外では雪が降りしきっていたからだ。
白くてふわふわな女の子のポメラニアンにはピッタリの名前と言えるだろう。
ユキもその名前を気に入ってくれたようだった。
こうしてユキは家族の一員となったわけだが、その日から我が家の生活は一変した。
ペットを飼い始めたことで、日常生活のあらゆる場面において癒しや潤いを感じるようになったのだ。
食欲旺盛でエサを与えると幸せそうな表情で食べ始め、あっという間に平らげてしまうユキ。
走ることが好きなのか、家の中でも外でも元気に駆け回るユキ。
家族の誰かがうたた寝をすると、毛布の中に潜り込んで添い寝をしてくれるユキ。
眠い時、大きなあくびをしてその場にコロンと横になりウトウトし始めるユキ。
病院を嫌がり、定期検診や予防接種などに連れていこうとすると必死に抵抗するも、病院から帰ってくればおとなしくなるユキ。
どんなユキもすごく可愛くて、見ているだけで癒されるし、落ち込んでいる時でもユキの姿を見ればすぐに元気になった。
まさにわたしたち家族にとって欠かせない存在となったのだった。
だけど、ペットはいつまでも一緒にいてくれるわけではない。
我が家に来て10年も経つ頃にはすっかり元気を失い、食欲は減衰し、昔のように所構わず駆け回ることも少なくなった。
年をとってすっかり老犬となってしまったことが原因だろう。
もちろんユキはその後も年をとり続け、どんどん衰えていった。
そして、わたしたち家族の一員となってからおよそ15年。
雪の降る寒い日の未明に、ユキは天国へと旅立った。
わたしはとっくに成人していたが、その時ばかりは涙をこらえることができなかった。
両親も同様に悲しんでいたのを覚えている。
家族が亡くなったのだから悲しい気持ちになるのは当然だろう。
でも、ユキと過ごした楽しい日々はちゃんと心に残っている。
写真や動画だってたくさん撮っておいた。
思い出だって家族で共有している。
だからそこまで寂しさを感じたりはしない。
むしろユキに対する感謝の気持ちでいっぱいだった。
きっと今頃は天国で元気に走り回っているのだろう。
もしも、そんなユキに言葉を届けられるとしたら、わたしはこんな言葉を伝えたい。
――今までわたしたち家族と暮らしてくれてありがとう。天国でも幸せにね。
この気持ちは果たして天国にいるユキまで届くだろうか。
……届いたらいいな。
そんなことを考えつつ、わたしはユキのいなくなった世界で今日も頑張るのだった。
我が家にやって来たポメラニアン 梅竹松 @78152387
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