俺の幼馴染は魔法少女にあこがれているらしい
綾乃姫音真
俺の幼馴染は魔法少女にあこがれているらしい
「うっわ……」
幼馴染の部屋に入った瞬間に飛び込んできた光景に思わずドン引きの声を上げてしまった。
「あんたねえ、女の子の部屋に来て第一声がそれって失礼じゃない? そんなだから大学生にもなって彼女ができる気配ないのよ」
そう文句を言ってくる幼馴染の
「ほっとけ、お前だって大学生にもなって彼氏ができる気配ないだろうが」
「あたしは作る気がないだけだから」
……狙っている俺としては安堵する言葉であると同時に、俺もダメなんだろうなと感じてしまう言葉。告白したくてもする勇気が一向に出てこない原因でもあった。
「俺も一緒だよ。ところで……その格好はどうした?」
あんまりよくないと思いつつもじっくりと見てしまう。それも上から下までじっくりと、だ。いや、本気でどうしてこうなった? まず目を惹くのは全体の色彩だ。ピンクにピンク。少しレモン色のラインが混ざってからのピンク。普段の晴香なら絶対に選ばない色と色の組み合わせだった。次に気になるのは服の形だ。いつもなら白の上着にダボダボのパーカーを合わせて、下はロングスカートが多い晴香なのに……ミニスカとか高校の制服以来じゃないか? それでも極力脚を出さないようにか、ニーハイソックスを履いているが……逆にスカートの裾から伸びる太ももの素肌部分が眩しく感じる。上はやけにフリルが多くヒラヒラと装飾されているのに、胸のラインだけはしっかり出ているという謎仕様だ。何故に胸周りだけがピッチリしているのか? まぁ晴香の大きすぎず、小さくもない胸のラインが見られて嬉しいというのは否定しない。
「どう可愛いでしょ? 次のコスプレイベントで着る予定の魔法少女衣装よ。ちゃんとピンクのブーツも用意してるんだから」
得意気に教えてくれる晴香だけど……俺はコス衣装よりも気になった部分がある。
「……少女?」
あなたお酒飲める年齢ですよね? もうすぐ大学も卒業ですよ?
「……言いたいことがあるなら、ハッキリ言いなさいよ」
「……昨日、俺の部屋でビールの500缶を一気飲みして『ぷっはぁ~』なんて言ってたやつが、少女? なんて思ってないぞ」
ちなみにそのまま数本の缶チューハイを開けて寝落ちしやがった。もうちょい飲みかた気を付けて欲しいんだがなぁ。仕方なく俺のベッドで寝かせてやったけど……無防備すぎるだろ! ……俺とふたりのときはともかく、外でこの調子だとそのうちお持ち帰りされそうで怖い。でも晴香って俺の居ないとこでは基本的に飲まないんだよなぁ……。あとは実家に帰ったときくらいか?
「思ってるでしょうが! 思いっきり言葉に出てるのよ! 女の子はいつまでも魔法少女にあこがれているの! いくつになっても少女なのよ!」
「……そっすか」
そういや昔から魔法少女アニメ見てたな……日曜の朝はどっちかの家でふたり並んで見ていた記憶がある。
「あったまきた! んんっ! あ、あー、あー」
咳払いして発声を確認している晴香。10秒ほどで納得いくとこまでチューニングができたのか、両手を胸の前に持っていってハートマークを作る晴香。計算されつくされた角度に首を小さく傾けて――
「根津家の愛担当♡ 魔法少女はるかちゃんでーす♡」
…………………………。
「きっつ」
「ちょっ、ふざけんな! そこは素直に可愛いって言いなさいよ!」
怒った晴香が投げるモノを探して手が向かった先はベッドの上だった。瞬きひとつを挟んで俺の顔にフサっと覆い被さったのは、晴香が部屋着にしているシャツだ。脱いでからそう時間が経ってないのか生温かかった。普通にいい匂いもする。ドキッと心臓が跳ねたのをキッカケにして速くなる鼓動。それを誤魔化すように俺は口を開いた。
「……あこがれるのはいいけど、年齢は考えような?」
「うっさい!」
顔から剥ぎ取ったシャツの代わりに飛んできた2発目。同じく部屋着のショートパンツだった。
「……よくもまぁついさっきまで自分が着ていた服を男に顔に投げられるよな。まだ体温が残ってて生々しいんだが」
「あんた以外にはしないっての! ほら、新作衣装のお披露目も終わったし着替えるから出てって!」
「へいへい」
まったく……呼び出したのは晴香だろうに……まぁいつものことだけどさ。ため息を吐きながらも、彼女の魔法少女姿が脳裏にしっかりと焼き付いているのは内緒だ。
「……『きっつ』とか言ってた割にはずっと凝視してたくせに。ほんとは好きなんでしょ? こういう格好の女の子」
ドアを閉める瞬間にそんなことを言ってくる晴香。ニヤついてるのを見るに、バレバレらしい。でもひとつだけ間違ってるぞ。女の子じゃなくて、お前だ。なんて言える訳もなく。俺は黙って帰るのだった。まぁ、帰る先は同じアパートの隣室なんだけどな。
俺の幼馴染は魔法少女にあこがれているらしい 綾乃姫音真 @ayanohime
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
同じコレクションの次の小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます