織田家は信勝の進言通り、対外的には謀反を起こし信長が返り討ちにした事にした。

 これにより織田家を継いだ信長に対して世間の評価が変わった。

 実の弟をも処刑する非情な殿様と噂になった。


 しかし、信長はそんな噂をよくは思わなかった。

「信勝はああ言ったけど、やっぱり処刑したってのはどうなんだ?…」

 弱気な信長に帰蝶が意見する。

「信長様、この戦国の世、親兄弟で実権を争うなんて当たり前ですよ

 現に中国地方の大内家では家臣が謀反を起こし、尼子家では親族同士が殺しあったとか…」

「…確かにうかうかしてたら、誰に殺られるか分からないな

 …いやな世の中だ」

 更に藤吉郎が進言する。

「信長様、その中国地方では毛利家が物凄い勢いで勢力を拡大しているそうです」

「大内、尼子の内乱に乗じてって事か…

 毛利元就、なかなか抜け目ない奴だな」

 信長は感心した。


「信長様、感心してる場合ではありませんよ

 各地の有力な大名達はどんどん力を付けているんです」

「…帰蝶は何でそんなに他の大名の事に詳しいんだ?」

 信長は首を傾げた。

「それは……、秘密です」

 帰蝶はそっぽを向いた。

「なんだ、それ?

 夫婦の間で秘密はないだろ?」

「まあまあ信長様、女性は謎めいていた方が魅力的でごさいますよ」

 藤吉郎が間に入ってその場をなんとなく収めた。


「…とにかく、信勝様の件を利用して尾張を統一して下さい」

「どうやって利用するんだよ?」

「それはこの私にお任せを!」

 帰蝶の提案に藤吉郎が名乗りを挙げた。

「猿、何か案があるのか?」

「私は元々物売りしていた身、情報の扱いには慣れております」

 藤吉郎は自信あり気だ。


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