藤吉郎は抵抗勢力のいる町で、物売り仲間を集めて信長の噂を広める事にした。

「みんな、知ってるか!?信長様は恐いぞ!

 反抗した実の弟信勝様を殺しちまったんだからな」

「それ、噂で聞いたが本当だったのか?

 お前、そんな殿様の下で大丈夫なのか?」

 物売り仲間が藤吉郎を心配する。


 藤吉郎は『しめた』と思った。

「俺は怒らせないように気を付けてるから平気さ

 …でも、尾張の他の殿様はどうすんだろうな?

 信長様に逆らったらみんな殺されちまうぜ」

「それは困る…

 俺のご贔屓の殿様は織田家と戦うかどうかで悩んでるんだよ」

 物売り仲間達はざわついた。

「信長様はいずれ尾張を統一するどころか、天下統一を狙えるお方だ!

 絶対、仲良くした方が良いって!

 逆にちょっとでも逆らえば、簡単に斬って捨てる人だぞ」

 藤吉郎はわざと大袈裟な素振りをしてみせた。

「そうだな、俺も殿様に話してみるよ!」

 物売り達は自分が出入りしている家がなくなるのは困るので藤吉郎の話をすぐに持ち帰った。



 藤吉郎は次々と尾張の町を周り、物売り仲間に噂を広げまくる。


「俺に従わない奴は信勝のようになるぞ!」

 そんな噂が尾張中に広まり、織田家に抵抗していた有力者達は震え上がった。

「信長はヤバいぞ!

 うつけなだけに、先代よりも何をするか分からないから厄介だ!」

 信長の父、信秀も血の気が多い武闘派だったが、それなりに常識的ではあった。

 うつけのイメージが強い信長は、噂の力も手伝って抵抗勢力は次々と信長の軍門に下った。


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