第19話
俺は、ひなたが好きだ。
好きと愛しているの境目は分からないけど、もしも後者の想いの方が一般的に大きいと言うならば、迷いなく愛しているとも言える。
俺の中で、ただの泣き虫の親戚だったひなたが、女になったのは中学1年生の頃。
曾ばあちゃんの葬式で、当時中学2年生だったひなたと1年ぶりに会った事がきっかけだった。
その時、俺はまだ袖丈の合わない学ランを着ていて、ひなたは赤いリボンのセーラー服を着て、髪をポニーテールに結っていた。
ひなたの制服姿を見たのは、それが初めてだった。
俺は長々としたお経の間中ずっと、目の前に座るひなたの薄い産毛が生えたうなじを凝視していた。
今思い出しても気持ち悪くて笑えてくるが、理由はそれだけだった。
誰かを好きになるきっかけなんて、そんなものなのかもしれない。
この1年間、俺の人生は冗談ではなく最高に幸せだった。
朝起きればひなたが居て、仕事に行く時はひなたに見送られて、昼間はひなたが作った弁当食って、家に帰るとひなたが出迎えて、眠りに落ちるその瞬間までひなたが居る。
でもこの幸せが完成系かと言われると、そうでもない。
人が必死こいて我慢してるのに、素っ裸で強請ってきたひなたに根負けした結果、なし崩し的にキスもセックスもしたけど、そもそも俺たちが正式に付き合ってもいない事実を不意に思い出すと、ちゃんちゃら可笑しくて笑ってしまう。
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