第10話
陸くんに嫌われた。一緒に居たくない、って言われた。どうしよう。もう駄目だ。それ以外の事が何にも考えられない。こんなのこの世の終わりだ。
ショックのあまり、ふらふらとその場に座り込みかけた――――けど、何とか踏みとどまった。
嫌だ、嫌だ嫌だ嫌だ、こんなのぜええええったいに嫌だ!
「うわぁあぁぁん!嫌いにならないでええぇぇええ!」
叫びながらリビングに飛び込むと、洗濯物を畳んでいた陸くんが「げ」と言いながら顔を上げた。
そのまま陸くんの胸に思いっきりダイブすると、さすがに今度は私もろとも陸くんが後方に倒れ込んだ。
「ごめんね、ごめんね、陸くんごめんねぇぇぇ」
「……お前の図太さには毎度感心するわ」
胸元に縋りつきながら大号泣していると、陸くんが深い溜息を付いた。
そんな溜息なんて付かないで。私が全部悪かったです。ごめんなさい。ごめんなさい。
「もう分かったから部屋行け」
「やだ!」
「戻れって言ってんだろ」
「せめてっ……せめて、私をここで寝かせてくださいいぃいぃ!仕事でお疲れの陸くんをソファになんか寝かせたら罰が当たるうぅうぅうぅ!」
「あー、マジでうるっせえ」
私をベリッと引き剥がした陸くんは、勝手にしろ、と言ってリビングを出て行った。
大好きな背中が扉の向こうに消えて行く光景を見たら、もっと涙が出てきた。
でも陸くんをソファなんかで寝かせるよりも、私が泣いている方が100倍良いに決まってる。
しばらく一人で泣いていたけれど、早く寝なきゃいけないことを思い出して、リビングの灯りを消してソファに横たわった。
でもお布団も陸くんの体温も無いのがすごく寂しかったから、さっき陸くんが私の頭に被せてきたバスタオルを拾って、ぎゅっと体に巻きつけた。
バスタオルの隅っこで涙を拭いてから、思い切り顔を埋めた。
乾いていて清潔なタオルは、安心と平和の香りがする。少しだけ心が落ち着いた。
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