第11話

これで何度目だろう。私はいつも陸くんを怒らせてしまう。


私は陸くんの決めることが全てだと思っているし、間違いなんて一つも無いと思っている。


私たちがさっきのキスみたいに、ぴったり隙間なく合わさるような二人なら良かったけれど、現実はそう上手くいかない。


私も陸くんも少しずつ違いながら、今ここに居る。だから歪みはどうしたって現れる。




一緒に住み始めた時、陸くんはバスタオルを2日使う人で、私は毎日変える人だった。


初めは驚いたけれど、お家によってルールが違うのは当然だし、確かに毎日お洗濯しなくて良いから合理的だなと思ったから、私は黙って陸くんのルールに合わせた。


でも寒い時期になると、2日目のバスタオルはどこか湿っているような感覚がして、少し苦手だった。


だけど言い出せなくって、ある日のお風呂上りにバスタオルの端っこで身体をささっとだけ拭いて、びちょびちょに濡れたままパジャマを着ようとしたら、偶然脱衣所に入ってきた陸くんに見つかった。


風邪ひくだろって怒られて、なんでちゃんと拭かないんだ、って訊かれて、私はようやく2日目のバスタオルが苦手だって事を伝えた。


本当は毎日ふわふわのバスタオルに顔をぎゅうって埋めるのが好きなの、って言ったら、陸くんは次の日から毎日洗ってくれるようになった。


それからタオルを干す時に、念入りにパタパタしてくれるようになった。そうした方が毛が逆立って、ふわふわするんだって。



陸くんは、たくさん私に合わせてくれた。


昔から強い香りが苦手で、柔軟剤の香りを嗅ぐとくしゃみが出る私に、無香タイプのものを買ってきてくれた。


辛い物が大好きなのに、いつもカレーは私に合わせて甘口を買ってきてくれる。


本当は夜更かしさんだったのに、私が気にして寝付けないだろうから、って寝る時間を早めてくれるようになった。



陸くんは、どうしたって出来てしまう私達の歪みを見つけ出して、少しずつ微調整してくれる。


だから私たちは1日ずつ同じになっていく。

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