第4話

「そんなもん嗅がせた覚えねえよ」


「んふ。起きてる時に嗅がせてくれないもんね、陸くん」



もちろん陸くんが寝てる時しか嗅ぎませんとも。てへぺろって笑うと、陸くんが靴の裏に貼りついたガムでも見るような眼で見てきた。



「マジでやめろ。ベッド分けるぞ」


「それは困る!」


「じゃあもうすんな」


「もうしませんです、はい!」



ベッドが分けられるのは死活問題すぎる。陸くんが眠った後の時間は、陸くんフィーバータイムなのだ。


陸くんに言ったら多分脳天にチョップされるであろうあんな事やこんな事が出来なくなってしまっては、私の生きる気力の半分が根こそぎ奪われるのと同意だ。


仕方ない。しばらくは陸くんの枕とかパジャマを嗅いで凌ごう。



「おい。枕もパジャマも嗅ぐなよ」


「ぬおぉぉぉ!なんで分かったの!?」


「アホ面に書いてあんだよ」


「やっぱり陸くんは凄いね!?じゃあ凄い陸くんに問題です!今私が何思ってるか当ててみてくださーい!」


「知らん」


「正解は、陸くん大好きでしたー!イェーイ!」


「どうでも良いからさっさと寝ろ。明日早いんだろうが」



フェイスタオルを畳み終えた陸くんが、今度は大きなバスタオルを広げながら呆れたように言った。


明日は午前中からお友達と映画を見に行く約束をしていた。


人気の映画で全然予約券が取れなくって、一番早い上映時間だから普段よりも1時間くらい早起きしなきゃいけないのだ。

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