番外編 心温まるひまわりの家の物語: 花咲く憧れの日々
犬飼ココア
第1話 花咲く憧れの日々
ひまわりの家。暖かな光が差し込むこの施設は、利用者たちの憩いの場であると同時に、働く職員たちにとっても大切な場所だった。その日も朝から活気にあふれており、新人介護職員の吉村愛子は、忙しなく動き回っていた。
愛子は真面目で努力を惜しまない性格だったが、ここ数日、いくつかのミスが続き、自信を失っていた。利用者の薬の管理を間違えそうになったり、会話で適切な言葉を選べなかったりと、小さな失敗が積み重なるたびに、胸が締め付けられる思いだった。「私はこの仕事に向いていないのかもしれない……」という暗い思いが愛子の心を支配していた。
一方で、この施設の主任でありベテラン介護職員の山田花子は、愛子の頑張りを密かに見守っていた。花子は利用者との信頼関係を大切にし、職員たちへの指導にも心を配る人物だった。ある朝、花子は落ち込んだ表情で資料整理をする愛子の姿を見かけた。机に並べられた書類には、愛子が何度も赤ペンで修正を加えた跡が残されていた。
「愛子さん、ちょっといい?」花子が優しく声をかけると、愛子は慌てて顔を上げた。「えっ、はい、何でしょうか?」
「時間があれば、少し話したいことがあるの。今日のお昼休憩に一緒に休憩室でお茶でも飲みましょう。」花子の穏やかな笑顔に、愛子は少し戸惑いながらも頷いた。
昼休み。休憩室には、花子が持参した手作りの焼き菓子と温かい緑茶の香りが漂っていた。花子は愛子にお茶を差し出しながら、静かに口を開いた。「愛子さん、最近少し元気がないようだけど、何かあったのかな?」
愛子はしばらく黙っていたが、やがてぽつりぽつりと口を開いた。「……ミスばかりで、私にはこの仕事が向いていない気がするんです。皆さんに迷惑をかけるのが怖くて。」
花子は優しく微笑みながら頷いた。「その気持ち、よくわかるわ。実は私も、新人の頃はたくさん失敗したの。利用者さんの名前を間違えたり、業務手順を勘違いしたり……でもね、大事なのは失敗を恐れずに、そこから何を学ぶかよ。」
花子は自身の過去の失敗談を交えながら、愛子に具体的なアドバイスをした。「例えば、今回の薬の管理の件は、どうしたら次回ミスを防げると思う?」
愛子はしばらく考えたあと、「もっと細かくチェックリストを作ったり、先輩に確認をお願いするのが良いかもしれません」と答えた。
花子はその答えに満足そうに微笑み、「そう、素晴らしい考えね。その姿勢が大切なの。愛子さんは真剣に考えている。その努力は、必ず利用者さんや私たちの力になるわ」と励ました。
それから数週間が過ぎ、愛子は花子のアドバイスを胸に、失敗を恐れず仕事に取り組むようになった。利用者たちとの会話を楽しむ余裕も少しずつ戻り、ある日、花子が利用者と笑顔で話す愛子を目にして静かに呟いた。「愛子さん、立派になったわね。」
その日、愛子は業務後に花子の元を訪れた。「花子さん、今日の私、どうでしたか?」愛子の瞳には不安と期待が混ざった光が宿っていた。
花子は微笑みながら、「とても良かったわよ。もうすっかり立派な介護士ね。これからも期待してるわ」と応えた。
愛子はその言葉に深く感動し、「花子さんのように、誰かに安心を与えられる存在になりたいです」と心からの想いを語った。その言葉に、花子の目尻には小さな笑みが浮かんでいた。
番外編 心温まるひまわりの家の物語: 花咲く憧れの日々 犬飼ココア @inukaicocoa
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます