菌対峙

Hogeko

第1話

 キッチンに洗い物が溜まっている。寒いから水に触れたくない。今は真冬。凍えるように寒い。こんな気温の中で手を水につけたら、たちまちひび割れが出来てしまう。とは言うものの、放置しておくこともできない。気を引き締め、キッチン手袋をはめ洗い始めた。

 堀田萌次(ほったもえじ)35歳は食器をスポンジでゴヒゴヒこすりながら考えていた。なぜ、食器を洗うのか。不衛生になるからだ。不衛生とはなんだろう。菌が繁殖している状態だ。そのまま使うとバイ菌が体に入って病気になるかも知れない。だから食器を洗う必要がある。では、洗剤を使う目的はなんだろう。水に溶ける食べかすは水だけで流せるはずだが、油分を含むとそうはいかない。油を水になじませて洗い流す必要がある。界面活性剤としての洗剤が必要になる。水だけでは洗い残しが発生し、そこから菌が繁殖してしまうだろう。

 以上を踏まえ、「食器洗わない計画」を立案する。まずは茶碗や皿などの食器を使わないことだ。これらを用いなければ洗う必要がない。では、これらの食器を代替できるものはあるだろうか。キッチンを見回してみると、あった、ありました。こびりつかないフライパン。これだ。フライパンで調理をした後に、そのままフライパンから食べればいいのだ。そうすれば茶碗、皿を使わなくてすむ。それに、もともと食材が付きにくい性能があるから食べかすの残りは少ないはずだ。多少ひっついていても、水でゆすげばそれなりに汚れはおちるだろう。もしそれでも汚れが気になるなら、水洗いのあと少し空焼きをして菌を退治してしまえばよい。(ただし長時間は禁物だコーティングが傷んでしまう)

 次はハシ、スプーンの小道具をどうするかを検討しよう。これらを使用しないで食事可能だろうか。それは無理だ。生理的に手づかみで食べるのは気がひける。やむをえず使うことにする。食事後、どうする。これも水でゆすぐだけにしよう。そのあとキッチンタオルでふき取り、滅菌してない食器置き場に積んでおく。さて、この菌のついている道具をどうすればよいのか。そうだ、いい考えがある。日々の生活の中で、一度はヤカンで湯を沸かす。これを利用しよう。沸騰した中に小道具を入れてグツグツと菌を茹で上げればよい。80度以上で5分間もやれば死んでしまうはずだ。

 計画は完成した、あとは実行あるのみ。


(この物語はフィクションです。実在する人物や団体などとは関係ありません)

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