11:浜辺家の人々 ①/気分は孤軍奮闘です

 幸か不幸か、ダイバー準備中初日にKaleidoさんと出会ったことで、俺達のデビュー計画は大きく変動した。


 当初は一週間程度をデビュー準備期間と置いていた俺だったが、デビュー配信をするならば記事の公開を待って、ダイバー準備中探索者としてある程度の知名度を得てからにした方がいいと判断したのだ。それに、記事公開後なら時期的にゴールデンウィークとも重なるしな。

 ただし──そこには一つ問題があった。

 おそらく……ではあるものの、Kaleidoさんは俺とナツカがコンビチャンネルを運営すると思い込んでいるという点だ。

 いや、実際二人で活動していたし、Kaleidoさんがそう思うのも無理はないのだが……当然、俺にその意思はない。俺がナツカの活動をサポートしているのは、あくまでダイバー準備中の間のみ。それ以降まで手助けをするつもりはない。…………そりゃまぁ、暇が合えば一緒に潜ったりくらいはしてもいいとは思っているが。


 Kaleidoさんがコンビチャンネルとして俺達を記事にしてしまえば、それはもう後戻りが出来なくなる。

 たかがデビュー間近の新人記事と思うかもしれないが、新人特集が継続的に組まれているということは、それほど新人特集にニーズがあるということだ。実際、ダイバーはデビュー後すぐでもリスナーが全くのゼロということは滅多にない(それこそ壊滅的なブレが映像にあるとかでない限りは)。

 新人記事というのは、それだけ新人ダイバーの『最古参』の構成に大きな影響を与える要素だといっていい。


 コンビチャンネルとして期待したリスナーがナツカのデビュー配信に駆け込み、そしてナツカ一人のデビューだと知り幻滅する……。心無いコメントが、記念すべきデビュー配信に大量に書き込まれる……。……そんな未来は……。

 …………流石に、その展開を想定できているのに何もしないのは違うだろう。それに……Kaleidoさんを勘違いさせてしまったのには、俺にも責任の一端がある。



「…………とは確かに思ったけどさあ」



 今日は土曜日。

 ナツカと行動を共にするようになってから初めての休日。


 延々と思索を巡らせて、俺は思わずぼやいた。

 何故か?

 その理由は、次の一言で粗方察してもらえると思う。


 現在地、の前。


 ………………正直なところ、下手な難関迷宮よりも手強いロケーションだった。




   ◆ ◆ ◆




  『カーマシア砂漠』での探索のあと。


 Kaleidoさんがおそらく俺達をコンビだと勘違いしていること、このままだとナツカのチャンネルがコンビチャンネルとして宣伝されてしまうことの問題点をきちんと説明すると、それを聞いたナツカは深刻そうな雰囲気でこう言った。



『なるほど……。それじゃあ作戦会議をしないといけませんね』



 ナツカにしてはまともな発言に、安易に乗っかってしまったのが俺の間違いだったのだろう。



『なら、明日の一一時に「蜘蛛の巣ターミナル」のカフェに集合で』


『え? なんでわざわざ異界迷宮ダンジョンの中で待ち合わせるんです? リアルでも歩いて会える距離なのにわざわざ転移場所ガチャして道程確認するの面倒ですよ』


『リアルで会ってるとこを見られたら最悪だろうが……!』


『じゃあ、ウチ来ます? それなら誰かに見られる心配ないですよ』


『おまっ、お前なぁ……』



 ナツカの家に来るかと言われて、率直に言えば────俺は物怖じした。

 もちろん、ナツカのことを女子として意識したことはない。こんなやつはいいとこ人間サイズのねこかなんかである。

 だが、たとえそんなナツカとはいえ、事実としてカテゴライズすれば女子に分類されるのだ。しかも同級生の。

 つまりナツカの家とは、女子の家と同義である。同級生の女子の家に、一人で遊びに行く──そこに含有される意味を無視できる輩は陽キャであり、当然ながら俺は陽キャではない。

 というかそもそも陰キャにとっては、男女問わず同級生の家に遊びに行くという行為自体が畏れの対象である。


 しかし同時に、その物怖じをナツカに悟られることを、俺は恐れた。

 だって、ナツカだぞ? 女子というより勝手に庭先に住み着いて家猫ヅラしてる半野良猫と称した方がまだ納得がいく存在に対して、女子を意識した逡巡を抱いたなどと悟られるのは──恥死である。っていうか間違いなくからかわれる。そうなったら憤死である。

 っつか、なんでこいつもこいつで俺のこと家に呼べるの? 俺が男子だってこと忘れてんの? いやワンチャン忘れてる可能性はあるが……。だって異界迷宮ダンジョンで過ごした時間の方が長いし……。にしてももっと警戒とかさあ……。


 ……ともあれ、内心の臆病(此処まで実時間にして〇・一秒)を悟られたくなくて、俺は咄嗟に言ってしまったのだ。



『……まぁ、それなら別にいいけどさぁ』


『よしきた。じゃあ決定ですよ』



 で、こうなったってワケ。


 ナツカの家は、大きめの一軒家であった。

 二階建ての家屋と庭が、俺の背丈よりも高いコンクリートの塀で覆われている。

 失礼にならないようにあまりあからさまにじろじろお宅を眺めたりはせず、ここまで案内してくれたナツカの方へ視線を向ける。


 当然、休日なのでナツカもまた私服姿だ。クリーム色の半袖シャツに、ベージュのスカート。頭にはベレー帽をかぶっていた。ナツカの癖に小癪なアイテムである。

 キララとして様々な衣装をきた俺としてはもう少し明るい感じでも似合うんじゃないかと思うが、まぁオシャレは当人が楽しめるのが一番だ。外野がとやかく言うまい。



「そういえば、今日は土曜日だけど親御さんはどうしてんの」


「お父さんもお母さんも昨日から旅行に行ってます。実は明日は結婚記念日でして。うちはおしどり夫婦なんです」



 そりゃほんとにおしどり夫婦だな……。

 ってことは、今日はナツカ一人で留守番か。そりゃそうだ。そうでもなきゃ同級生の男子を家に上げたりしないか。家族がうるさいもんな。



「なので、家にいるのは姉一人です」


「姉ぇ!?」



 そんなのいたっけ……、……いや! そういえば言ってたなぁ! 姉がいるって!

 ナツカの年齢的に、大学生くらいか……? なんか一人っ子っぽい印象だから、姉がいる感じがしないんだよな、ナツカ。何か聞くたびに新鮮な意外さを感じさせられている気がする……。



「まぁ、コハ姉のことはあんまり気にしなくていいですよ。変人なので」


「お前にそう言われるって相当だな……」



 なんか怖くなってきたぞ。人間の形を保っているかどうかすら怪しい。

 そんなことを考えながら、『浜辺』と書かれた表札のついた塀の間を通り、玄関口へと進んでいく。

 ナツカは扉を開けて、



「ただいまー。友達連れて来てますよ」


「お、お邪魔しまーす……」



 少し遠慮がちに挨拶しながら、俺はナツカに続いて家に入っていく。

 家に入るとすぐ、広めの玄関と廊下が眼前に飛び込んで来た。廊下の右側には二階へと続く階段がある。廊下の途中には左側に二つ扉があり、突き当りにリビングと思しき部屋があった。……扉は開けっ放し。

 で、家には姉がいるらしいが…………、



「あれ? コハ姉ー? コハ姉いませんかー? 寝てますかー?」



 家にいるらしい姉は、今は不在のようだった。



「買い物にでも出かけてるんですかね。まぁいいです。それじゃさっさと要件を済ませてしまいましょう」



 そう言って、ナツカは右側の階段を昇っていく。

 俺もそれに倣って階段を昇っていく。



「姉は、迷宮省で働いてるんですよ」



 階段を昇りながら、ナツカはそんなことを言った。へぇ、迷宮省で……。ってことは、けっこうなエリートって感じなんだな。驚きだ。ナツカの姉なのに……。

 ……ん? ってことは最低でもお姉さんは二二歳以上? いや、院も出てるだろうから二四か二五歳以上……?



「ナツカさんとは一〇歳差で。随分前に家に出てひとり暮らしなんです」


「あ、そうなんだ。あれ? じゃあ何故家に……?」


「よく分かんないですけど、たま~に土日に帰ってくるんですよ。本人は自炊が面倒とか言ってますけど。今日は朝に帰って来た感じですよ。いないってことは、仕事で呼び戻されたか近所を散歩してるかしてるんじゃないですかね」


「仕事ぉ……? 土曜日なのにか……?」


「国家公務員に休みなんてないらしいですよ」


「こわ……」



 なんとなく安定してるイメージだったけど……。なりたくねぇな、公務員。

 やっぱり一生荼毘配信して生きていたい。



「まぁ、コハ姉はまだ迷宮省だからマシらしいですけどね。これが他の省庁だったらたまに実家に帰るのもままならないって、この前言ってました」


「大変なんだなぁ……」


「コハ姉の話はこのくらいにして。ささ、どうぞ。此処がナツカさんの部屋です」



 そう言って、ナツカは俺を自分の部屋に案内する。

 正直、この期に及んで俺は『女子の部屋』に入ることに言いようのない恐怖を抱いていた。

 無理もないと思ってほしい。たとえナツカとはいえ、再三言うがカテゴリは『女子』なのだ。何か禁足地に上がり込むような言いようのない怖さがあったのだ。

 ただし。

 そんな俺の忌避感は、部屋の中を一目見て失われた。



「…………お前、人来るって分かってるなら片付けとかしろよ」



 ナツカの部屋の中には、あやつの私物が雑然と置かれまくっていた。

 ゴミや衣服の脱ぎ殻が散らかっているわけではないのだが、やれバランスボールだの、やれダンベルだの、やれヨガマットだの、やれキャンパス台だの……、おそらくナツカが興味を抱いたジャンルのアイテムが不規則に転がっているのだ。

 なんというか、一目見ただけで『ああ、ナツカの部屋っぽいわ……』という悲しき納得が心を支配する部屋だった。



「逆に聞きますけど、一日でこの部屋を片付けられると思いますか?」


「諦めてんじゃねえよ!!」



 ツッコミを入れつつ、俺はナツカの部屋に入る。

 とりあえずその辺に転がっていたバランスボールをひっつかみ、そこに腰かけることにした。

 ナツカは学習机の椅子に座って、



「で、問題は……Kaleidoさんの誤解の件でしたよね」



 おお、目的を忘れていない。

 ナツカのことだし『何の話でしたっけ?』くらいとぼけたことは言うと思ってた。っていうかその方向でツッコミの準備をしていた。ちゃんと真面目に考えてくれてるんだな……。



「ああ、そうだ。多分、Kaleidoさんは俺のことをお前の相方だと思ってるからな。まず間違いなくコンビチャンネルとして紹介されるだろう。だが、そうなるとお前の初配信はコンビ目的のリスナーが大半になっちまう」


「ふむ…………」



 ナツカは、大真面目な表情で俺の説明に頷いた。

 やはり、ナツカにとってもそこは由々しきポイントだよな。何せチャンネルはナツカのものなのだ。

 Kaleidoさんに連絡を取れれば、誤解を訂正することもできるのだが……。連絡先、Kaleidoさんと交換してないからなぁ。

 あの後Kaleidoさんからアクションが来ることを期待してクロのアカウントを作ったのはいいものの、反応はナツカのアカウントからのフォローのみ。っていうかこれ既成事実がどんどん積み重なってねえか?



「…………そもそも、コンビチャンネルだと何の問題があるんでしたっけ?」



 ……あ! 駄目だコイツ!! 真面目に聞いてるんじゃなくて、無限に話がピンと来てねえんだこれ! しかも根本的な部分にピンと来てねえ!!



「何の問題って……お前な、俺の本業はランクマダイバーのキララちゃんだろ! 二足の草鞋なんてどう考えても無理があるだろうが!」


「ふむふむ。他には他には?」


「あ? えーと……。せっかくのナツカのチャンネルなのに、経験者の俺が出張るのはなんか悪いとか……。あんまり『クロ』としての露出が増えて、『キララ』と同一人物ってことがバレたら怖いとか……」


「ふむふむ」



 あれ? なんか案外聞く姿勢を作られてる……。俺、ツッコミを入れてたはずだよな? これじゃなんか懸念点の聞き取りをされているだけのような……?



「せなみさんの言いたいことは分かりましたよ。じゃあ、どうすればいいか考えてみましょうか。せなみさんのアイデアも出してほしいです」


「ああ、いいけど……」



 なんか暖簾に腕押しって感じがして釈然としないが……まぁいいか。

 ええと、どうするか、だが。



「やっぱり、解決策としては今よりもっとナツカのことを押し出した活動をすべきだと思う。それでお前自身のファンをいっぱい増やすんだ。そうすれば初配信で俺がいなくても、そんなに気にされなくなるんじゃないか?」


「それで言うと、そもそもせなみさんの自意識過剰という可能性もあるのでは? リスナーも案外ナツカさんのことが大好きな可能性だってありますよ」


「どの口がほざくか」



 俺をナメるなよ。メディア露出度が同じという条件なら、『キララ』の経験がある俺の方が人気を取るのが上手いに決まってんだろうが! もっとも、『キララ』の時と『クロ』の時とではテンションは全く違うが……。



「他はどうですか?」


「んー……。ナツカ一人での撮影をしてみるとか? デビュー配信まで協力するっていう約束を反故にするみたいで嫌だからほっぽりだすような形にはしたくないが……」


「後はどうでしょう」


「一人で他のダイバー準備中の探索者とコラボするとかはありかもな。俺とのセット感が薄れて良い具合になる気がする」


「まだありますよね」


「お前さっきから俺にばっかり案出させてるなぁ!?」



 騙されねえぞ!! ブレインストーミングをたった一人に任せて解決策を考えた感を出そうとしてるだろテメェ!! 楽しようとしやがって!!



「どうどう。落ち着いてください、せなみさん。ナツカさんは考えていたのです。何をするのが一番いいのか……。ちなみに、現時点でせなみさん以外とのコラボはしません。その人とコンビみたいに言われても面倒なので……」



 それはまぁそうか。現状でも俺とコンビ扱いされてるわけだしな。

 俺はまだ独立した状態でいさせてやりたいという意志を持ってるからいいが、コンビ扱いされた相手が乗り気だった時は面倒くさい。積極的にコンビ路線を推し進めようとしてくるわけだからな。ナツカも乗り気だった場合は問題ないが……実際にはこの通り面倒って言ってるし。

 ナツカの活動を手伝うにあたって色々調べているときに、世のダイバー準備中界隈では、そういう闇のごたごたもあると聞いたことがある。人間関係のトラブルは事前に避けるが吉、だ。



「じゃあ──」



 ナツカからの意見が出て来たのを皮切りに、俺達は本腰を入れて議論を開始する。

 とはいえ──



「でもそうなったら後はもうナツカさんの独壇場じゃありませんか?」


「いーや、お前は絶対に自爆するね。賭けてもいいね」


「心外ですよ!!」



 根本的な話。

 俺とナツカは、真面目な話をするのに向いていない。


 議論はすぐに脇道に逸れていってしまう。



「だからさぁ、『匠の愉快な名人芸フルリフォーム』の真骨頂は起爆能力じゃなくて、『合成』の共通効果をダウングレードして物質同士の接着に変更した部分にあるわけ。だからもっとこう、接着にダウングレードした『合成』の基本性質を詰めるんだよ。本人は例外的に『合成』可能とかさ……」


「意味が分かりませんよ。何で本人だけ例外的に『合成』できるんです? 普通自分自身を『合成』なんてできるわけないじゃないですか」


「それを言ったら接着だってそうだろうが! だから接着にダウングレードした『合成』なら本人も合成できるっていう風に解釈してさあ……」


「せなみさん、それ屁理屈って言うんですよ」


「悪かったなぁ!! 俺はその屁理屈でおまんま食ってんの!!」



 三〇分もする頃には、俺達の議論は全く違う議題に移っていた。

 ちなみに、今の議題は『どうやって「匠の愉快な名人芸フルリフォーム」でランクマシーズン一位を獲るか』である。


 激論を交わしたナツカは軽く息を整えて、



「はぁ……。喋り過ぎたら喉が渇きましたね。ちょっとお茶取りに行って来ます。飲みます?」


「おー、ありがとう。頼むわ」



 お茶を取りに席を立ったナツカを見送り、手持無沙汰になった俺はきょろりと視線だけを動かして辺りを見渡す。

 部屋には、意外にも異界迷宮ダンジョン関連のグッズ類はなかった。


 異界迷宮ダンジョンがエンタメとなったこの時代、配信以外にも異界迷宮ダンジョンは身近にありふれている。

 ダイバーのグッズとしてアクリルキーホルダーやら缶バッヂがあるのはもちろんのこと、異界迷宮ダンジョンを題材とした漫画・アニメ・ドラマ、異界迷宮ダンジョンを舞台としたエクストリームスポーツも盛んだ。一部のダイバーはアイドル的な活動をしているので、そういうグッズも存在する。現代の中高生の大半は、そうした異界迷宮ダンジョン文化の何かしらに触れているという。

 俺も(自分で販売した)キララグッズを幾つか部屋に置いているし……。


 だが、ナツカの部屋にはそういうものは一切なかった。

 本棚に探索指南の本すらないのだ。あれほど異界迷宮ダンジョン探索に熱を入れているというのに……。…………いや、アイツの技量を考えたら、本を読んで勉強なんてしてるわけないわな。


 ともあれ、これだけ雑然と様々なものが散らばっているというのに、異界迷宮ダンジョン関連のものだけないのは意外だった。

 もしかして、そういうものは全部迷宮省で働いているという姉からのおさがりだったりするのかもな。アイツのことだ。自分の部屋に置きたくないから姉の部屋にあるものを勝手に取って見ていたりしてそうだ。


 そんな風にナツカの姉の苦労を偲んでいると──



「ぎゃっ、ぎゃあああああああああああああ!?!?」



 階下から、女子がするにはあまりにも似つかわしくない、明らかに色気のない悲鳴が響き渡る。

 ──考えるまでもない! ナツカだ!!



「ナツカ!?」



 死体でも見つけたような叫び声……尋常じゃあない!

 俺はすぐさま立ち上がり、階段を滑るように降りる。声は……突き当たりのリビングの向こうからか。

 人んちだからといって遠慮している場合ではない。もしかしたら、空き巣が入って来た可能性だってあるんだ。 俺は走って、リビングへと入る。

 リビングは右側に和室、左側にダイニングがある構造になっていた。

 ナツカは左側、ダイニングの向こうにあるキッチンで立ち尽くしている。──人の姿は見えない。怪我をしている様子もない。ひとまず無事だ。



「どうしたナツカ!? 何かあったのか?」



 声をかけると、ナツカははっとしてこちらの方へ振り返った。

 明らかに当惑した様子のナツカは、ゆるゆると首を振って、



「い、いや。別に何も……た、ただ虫を見ただけで……」



 明らかにおかしいので、俺は無視してナツカの方へ歩み寄る。

 ナツカが制止しようとするのを抑えて近づくと──そこで俺は、ナツカが見たを発見した。

 そこには────



「う、ううん……。だ、誰だい…………?」



 芋臭いジャージを纏ったポニーテールの女性が。

 まるでボロ雑巾のように、床で転がっていた。

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