第9話

しかし、あの"頭の悪そうな連中"のそばだけは通りたくない。この暑さの中で、あのような不良連中に絡まれるだなんて絶対にごめんだ。




(神よ、なぜこのような試練を私にお与えになるのでしょう?)

(試練を耐えしのぎ、将来はシスターにでもなれとでもおっしゃるのですか?)


 コンビニで雑誌を買い、家に帰るだけの私に、あまりにもつらい仕打ちが続くので、私は思わず神にそう嘆いてしまうほどだった。


 しかし、そうやって頭の中で帰るべき道を考えたり、自分の不幸を嘆いたり、神への問いかけを続けている最中も、太陽は容赦なく私を睨みつけ続ける。立ち止まっていては連中の前に太陽にやられてしまうだろう。




 私は連中に存在を気づかれないため、スパイ映画の主人公にでもなったような気分で、自分自身の気配を消した。そして、


(抜き足、差し足、忍び足……。)


と、心の中で言いながら、そっと信号を渡り始めた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る