第7話:謎の老人の調合書

初めてのダンジョン探索から一週間が経過した。和也はギルドの調合室で新たな実験に取り組んでいた。


「光彩の花の成分分析、かなり進んできましたね」


綾小路が調合室に入ってきて、和也の作業を覗き込んだ。


「はい。驚くべき発見がありました」


和也は顕微鏡から顔を上げ、熱心に説明を始めた。


「この花の花粉には、光を蓄える特殊な細胞が含まれています。そして、その光には魔力が含まれているんです」


「魔力ですか?」


「はい。通常の植物では見られない現象です。この魔力を抽出して安定化させれば、様々な調合に応用できる可能性があります」


綾小路は感心した様子で、和也の研究ノートに目を通した。


「これは素晴らしい発見です。ギルド本部にも報告すべき内容ですね」


彼女はタブレットを取り出し、何かを確認した。


「そういえば、佐藤さんに朗報があります。あなたの調合師としての評価が認められ、正式にギルドメンバーとして登録されました。これからは定期的に探索任務に参加していただきます」


和也の顔が明るくなった。


「ありがとうございます!」


「それと、これがあなたの初任給です」


綾小路は封筒を渡した。中には予想以上の額が入っていた。


「これは...こんなにも?」


「ボスモンスター討伐の報酬も含まれています。チームへの貢献度が評価されました」


和也は感謝の言葉を述べながら、これまでの苦労が報われた気持ちになった。失業中の不安から解放され、新たな道が開けたのだ。


「さて、次の任務についてですが」


綾小路はタブレットに表示された任務一覧を見せた。


「新宿ダンジョンの4階に新たなエリアが発見されました。『薬局エリア』と呼ばれる場所です」


「薬局?」


「ええ。そこには様々な薬草や薬品の素材が存在すると予測されています。調合師にとっては格好の調査地です」


和也の目が輝いた。


「ぜひ行きたいです!」


「期待していました。明日、探索チームを編成します。今回は佐藤さんが主任調合師として参加してください」


「主任...ですか?」


「はい。他に2名の見習い調合師が同行します。彼らへの指導もお願いしたいのです」


和也は少し驚いたが、すぐに決意の表情を見せた。


「わかりました。精一杯頑張ります」


翌日、和也は新たなチームメンバーと対面した。


「小林健太です。調合師見習いとして先月から働いています」


小林は大学生のような若い男性で、少し緊張した様子だった。


「田中美咲です。私も調合師見習いです。佐藤さんの活躍は聞いています。よろしくお願いします」


田中は20代前半の女性で、知的な印象を与えた。


「佐藤和也です。まだ経験は浅いですが、一緒に頑張りましょう」


和也は二人に笑顔で挨拶した。

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