第6話:調合の才能
「逃げられない?」
和也が尋ねると、綾小路は首を横に振った。
「ダンジョンの構造変化で出口はこのホールの向こう側にあるはず。倒すか、何らかの方法で足止めするしかありません」
メイクアップクイーンはチームに気づき、甲高い声で叫んだ。
「お客様~♡ 素敵なメイクアップをしてあげるわ~♡」
その声には異様な魅力があり、和也は一瞬だけ意識が朦朧とするのを感じた。
「精神攻撃だ!気をしっかり持て!」
近藤の声で我に返る。
「作戦を考えましょう」
綾小路が冷静に状況を分析する。
「近藤さんが前衛で注意を引きつけ、鈴木さんは後方から魔法攻撃。私はサポートと牽制を担当します」
「僕は?」
和也が尋ねると、綾小路は真剣な表情で言った。
「佐藤さんは今まで採取した素材を使って、何か有効な調合ができないか考えてください。特に光彩の花...あれには特殊な効果があるはずです」
和也は採取した素材を確認した。サラリーマン型の体液、美容部員型の香水成分、そして光彩の花。これらを組み合わせれば何かできるはずだ。
「わかりました。時間をください」
「任せた!行くぞ!」
近藤が叫び、大剣を構えてボスモンスターに突進した。鈴木は詠唱を始め、火と氷の魔法を交互に放つ。綾小路は素早い動きでボスの側面に回り込み、隙を突いて攻撃を加えた。
和也は安全な場所に退き、急いで調合キットを広げた。
「光彩の花の特性は...光を放つこと、そして精神を落ち着かせる効果がある」
彼は花びらを砕き、抽出液を作る。
「美容部員型の香水成分には神経作用がある。これを逆利用すれば...」
次に、美容部員型から採取した液体を滴下し、特殊な触媒を加えた。
「最後にサラリーマン型の体液...これには結晶化を促進する効果がある」
三つの成分を混合し、小型バーナーで熱する。すると液体が徐々に変化し、七色に輝く粘性のある物質になった。
「できた!」
和也が叫んだとき、戦況は厳しくなっていた。近藤は腕に怪我を負い、鈴木の魔法も効果が薄れてきている。綾小路も息が上がっていた。
「何ができましたか?」
綾小路が後退しながら尋ねる。
「光の結晶化溶液です!これをボスの目に当てれば、一時的に視界を奪えるはずです!」
「やってみましょう!」
和也は調合した溶液を特殊なスプレーガンに入れた。
「近藤さん、ボスの注意を引いてください!」
近藤は大きく叫びながらボスの前に立ちはだかった。メイクアップクイーンは彼に集中し、大きな腕を振り上げる。
「今です!」
和也は思い切りスプレーガンの引き金を引いた。七色に輝く霧がボスの顔面に直撃する。
一瞬の静寂——そして、けたたましい悲鳴が響いた。
メイクアップクイーンは顔を覆い、苦しそうに暴れ始めた。その目は七色の結晶に覆われ、視界を完全に奪われている。
「効いた!」
「チャンスです!総攻撃!」
綾小路の号令で、チームは一斉に攻撃を仕掛けた。近藤の大剣、鈴木の魔法、綾小路の精密な攻撃が次々とボスに命中する。
「もう一押しです!」
和也は残りの溶液を見た。まだ少し残っている。
「最後の一撃に使いましょう!」
彼は近藤に駆け寄り、大剣に溶液を塗布した。
「これで最後の一撃を!」
七色に輝く大剣を手にした近藤は、渾身の力で斬りかかった。剣がボスの胴体を貫く。光の結晶化が内部から広がり、メイクアップクイーンの体が内側から輝き始めた。
「みんな、下がって!」
綾小路の警告の直後、ボスモンスターは光の粒子となって爆散した。
「やった...倒したぞ!」
近藤が息を切らしながら叫んだ。
「佐藤くん、あの調合は見事だった!」
和也は安堵と達成感で胸がいっぱいになった。自分の知識と技術が、チームを救ったのだ。
「ダンジョンの変動が収まりつつあります」
鈴木が周囲を確認して報告した。
「向こうに出口が見えます。急ぎましょう」
チームは疲労感を抱えながらも、無事に出口にたどり着いた。
ギルドに戻ると、彼らの活躍はすぐに評価された。特に和也の即席調合による貢献は高く評価され、調合師としての評価が一気に上がった。
「佐藤さん、素晴らしい活躍でした」
綾小路は報告会の後、和也に声をかけた。
「今日の経験で、あなたの可能性を確信しました。調合師として大きな才能があります」
和也は照れながらも、胸を張った。
「ありがとうございます。まだまだ学ぶことが多いですが、これからも頑張ります」
帰り際、和也は自分のダンジョンギアを確認した。
```
【佐藤和也】
職業:調合師(見習い)
レベル:3
経験値:210/300
HP:420/420
MP:580/580
力:13
敏捷:15
耐久:16
知性:48
精神:41
スキル:基礎調合(中級)、素材分析(中級)、薬学知識(中級)、即席調合(初級)
```
レベルが上がり、新しいスキル「即席調合」が追加されていた。これはダンジョン内での実戦経験によって得られたスキルだ。
和也は満足感と共に、これからの道のりに期待を抱いた。調合師としての第一歩を踏み出したのだ。
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