第8話:薬局エリア探索
今回のチームは、前衛戦士2名、魔法使い1名、そして調合師3名の構成だった。調合師が多いのは、薬局エリアでの素材採取が主目的だからだ。
「出発前に、調合キットの確認をしましょう」
和也は二人の装備を点検した。基本的な道具は揃っているが、配置に無駄があるようだ。
「小林さん、よく使う器具は取り出しやすい位置に配置しましょう。田中さん、この試薬は別々に保管した方が安全です」
二人は熱心に和也のアドバイスを聞き、装備を調整した。
「佐藤さん、薬学の知識があるんですよね?」
田中が質問した。
「はい、以前は製薬会社で働いていました」
「すごいです!私は化学専攻だったんですが、佐藤さんみたいに実務経験があると心強いです」
和也は微笑んだ。
「お互いの知識を活かして、良いチームになりましょう」
準備が整い、チームはダンジョンへと向かった。今回の探索は4階が目的地だ。1階から3階までは比較的安全になっており、定期的なパトロールで危険なモンスターは排除されている。
チームは順調に4階へと到達した。そこは予想通り、巨大な薬局のような空間だった。棚には無数の瓶や箱が並び、空気中には薬草の香りが漂っている。
「美しい...」
田中が感嘆の声を上げた。
「まずは安全確認を」
前衛の一人が言い、チームは慎重に周囲を調査した。目立ったモンスターの気配はないが、油断はできない。
「調合師チーム、素材採取を開始してください。常に護衛が付きます」
和也は小林と田中に指示を出した。
「小林さんは左側の棚、田中さんは右側の棚を担当してください。私は中央のカウンター周辺を調査します」
三人は分かれて作業を始めた。和也は専用の検査キットを使い、見つけた素材の安全性を確認しながら採取していく。
「佐藤さん、これは何でしょうか?」
小林が不思議な形の植物を見せた。それは青い葉と赤い実をつけた小さな鉢植えだった。
和也は慎重に観察した。
「興味深いですね...これは現実世界の薬用植物『アロエ』に似ていますが、色彩が全く異なります」
彼は検査キットで成分を分析した。
「驚きました。これは『逆転アロエ』とでも呼ぶべきものかもしれません。通常のアロエは抗炎症作用がありますが、これは逆に炎症を促進する成分を含んでいます」
「危険なものですか?」
「いいえ、適切に調合すれば、血行促進剤や代謝活性化剤として使える可能性があります」
和也は丁寧に植物を採取し、専用の容器に保管した。
一方、田中も興味深い発見をしていた。
「佐藤さん、こちらにも珍しいものがあります」
彼女が見せたのは、小さな結晶の集まりだった。虹色に輝くそれは、まるで宝石のようだ。
「これは...『結晶化した薬液』ですね。ダンジョン内で通常の薬液が長期間放置されると、このように結晶化することがあります」
和也は慎重に結晶を手に取り、光に透かして見た。
「純度が非常に高いです。これを溶かして分析すれば、強力な薬の基礎成分になるでしょう」
チームは次々と貴重な素材を発見し、採取していった。和也は二人に適切な指示を出しながら、自らも調査を進める。
「あれは...?」
和也の目に、カウンター奥の小さな扉が入った。それは薬局の奥にある調剤室のような場所だ。
「前衛の方、あの扉の向こうを調査したいのですが」
護衛の一人がうなずき、和也と共に扉に近づいた。慎重に扉を開けると、そこには小さな実験室のような空間が広がっていた。
「これは...調合室?」
テーブルの上には様々な実験器具が並び、棚には珍しい素材が保管されている。まるで誰かが使っていたかのようだ。
「注意してください。罠やモンスターがいるかもしれません」
護衛が警戒しながら言った。
和也は慎重に室内を調査した。特に危険な様子はない。むしろ、整然と並べられた器具や素材は、誰かが大切に使っていた形跡を示していた。
「これは...」
テーブルの上に一冊の本が置かれていた。和也がそれを開くと、手書きのレシピや調合方法が記されていた。
「調合書...しかも非常に高度な内容です」
和也は興奮を抑えきれなかった。この本には自分が知らない調合法が多数記されている。
「これは持ち帰って詳しく調査すべきです」
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