これは、人間讃歌と呼んでもいいかもしれない。ある種の「美しさ」を秘めた物語だと感じました。
公園でトレーニングをしている主人公。そんな主人公のT君。そんな彼の前に小学一年生くらいの幼い男の子がやってくる。
「凄いなあ。あこがれちゃうなあ」
そう言ってやり方を教わると、「結構簡単だね」とあっさり習得してみせる。
圧倒的な才能。それを見せつけることにより、人に敗北感を与える。
こういう存在は世の中に本当にいるのかもしれない。少し教わっただけでコツを掴み、あっさりと先輩を追い抜いて行ってしまう人間。そしてプライドをがたがたにへし折っていき、人の気力を奪い去る。
そんな「あこがれ小僧」だったが、果たして彼は世の中で無双しうる存在となれるか。
物語の後半では「M」という別の人物が襲われることになるが、結果は……
その結末はとても美しいと感じました。「人間の底力」とでもいうもの。「あこがれ小僧」は「一定ライン」までの習得は早いかもしれない。でも「更にその先を突き詰める」だけの力があるかどうか。
更に高みへ、更に深みへ。一定ラインで満足せず、真髄を、究極を。それを目指せる精神性こそが至高。そんな清々しさを感じさせてくれる作品でした。