第21話 ご奉仕を待ち侘びて

 本体のフレディーに出会ってから三日。


 私はフレディーの面倒、要するにご奉仕をしていた。


 それはもう最高だよ。食事や身体を洗うのにも人の手が必要なフレディーに、合法的にお触り出来るんだ。


 食事は口移しだってしまくれるし、清掃も念入りに隅々まで洗えるんだ。問題点は私が興奮しておっぱじめてしまうことだな、初日は中々スムーズにご奉仕出来なかった。

 私がご奉仕する度可愛い声出すんだもん、仕方ないよね。


 ま、三日で食事二時間、清掃一時間まで縮められたんだ、私の急成長に驚きだな!


 今はそんな急成長を遂げた私とフレディーは、お昼ご飯の真っ最中。

 フレディーに抱きついて本日十二回目にもなる口移しをしながら、次いでにディープキッスを決め込んでいた。もちろん割合は口移し三割ディープ七……あ、痙攣の予兆が……ッ……!


 小刻みする私に、フレディーがご飯を飲み込んでから言う。


「そろそろ普通に食べさせて欲しいです」

「……ふぅ、ダ、ダメだ。私がご奉仕するまで、ここの職員が交代制でやってたらしいじゃないか。フレディーの意識が無かったとはいえ、私は職員がして来た分を取り戻さないと……!」

「十分に取り戻せてますよ……あ、ちょっと……ッ」


 うるさい口は塞いでおこうじゃないか。

 三日間キスしまくったとはいえ、フレディーとファーストした時の幸福感と同じものが絶え間無く続く感覚……経験値を貰ったばかりな私には刺激が強すぎるんだ。ご奉仕の内に慣れて置かないと……あ、また痙攣の予兆が……!


 小刻み、口移し、小刻みを繰り返し。


「ふぅ、これで完食だな。次はどうする? お風呂? 私? それとも……グッグへへへへッ……!」

「お昼ですし、お風呂は早いので違うものに」

「え? お風呂で私とイチャラブしたいって? しょうがないな~フレディーくん~」

「……へへ、お願いして貰います」


 可愛い笑顔なフレディーにおまけのディープをしておく私。誰も近寄れない雰囲気の個室で、ガラッと扉が空く。


「フレディーさん、義手と義足が届きましたよ」


 職員の言葉をガン無視してベットでイチャイチャするバカ夫婦。職員はため息を大きくついてからもう一度声をかけ、私は咄嗟に振り向く。


「今、もう少しで……もう少しだからッ!」

「何がもう少しですか! 毎日声がうるさいのですよ! せめて抑えてしてください」


 私は職員を横目でフレディーの乳首をいじりながら。


「フレディー、声うるさいらしいぞ。私の耳元で囁くように喘いでくれ」

「フレディーさんじゃなくてあなたですよ! それにフレディーさんの声は可愛いのでOKです」


 OK職員の背後にいた、背丈が小さめの職員も揃って。


「毎日有難くご馳走にしてます。耳の保養なのです」


 二人して顔を見渡して、ねー? なんかしちゃっている。


 フレディーがいくら美青年だからって……聞き耳立ててる職員らが問題じゃないか!

 あれだろ、美青年の喘ぎ声だけ聞きたいから雑音は黙れってことだろ!


 ん?

 職員が持ってるあの箱って……


「あああ! 義手が届いてるじゃないかッ! フレディー装着するぞ!」


 呆れる職員からバッと箱を奪い、乱暴にベリベリ破いて義手と義足を取り出す。

 ……出したのはいいものの、どうやって取り付けるんだ?


 背の低い方の職員が心配そうに言う。


「私らがお手伝いしましょうか?」

「え? 4Pなんてする訳ないだろッ! フレディーは私の夫だ、手でも出したら噛みちぎるぞ」


 獣の唸り声をあげる私に、もう一人の職員の背に隠れる低いやつ。涙目で怯えてもフレディーはやらんぞ。


 獣は職員に見せびらかすように美青年とディープ。

 唾液交換し終えたフレディーは、申し訳なさそうにしながら言う。


「可哀想ですよエリン、大人しく付けて貰いましょうよ。4Pしたくないと思いますし」

「いえ、したいですけど」


 私よりも早く、なに!? と驚く背の低くない方。顔を赤くして職員が職員をひっぱたいている。もう部屋から出て行ってくれないか?


 ひっぱたいた職員は私をチラチラ警戒しながら、フレディーに義手と義足を取り付けていく。見れば案外簡単そうだな。

 はあ、フレディーの腕をいつでもしゃぶれなくなるのは寂しいものだな。


「これは訓練用の義足です。仮義足と呼ばれる物で、後にフレディーさん専用の義足を専門職人に作って貰うんですよ」

「ふーん、じゃあ後は私がフレディーを見るので」


 手でハエを追い払うようにシッシッとする。


 私達のラブ空間を乱した美青年好きの職員らは、ため息をわざわざ二回ほどしてから撤退する。物理的にも空気を乱して行くんじゃない。

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