第9話 『ほんとに?』

「許子。話があるんだけど、いま、ちょっといい?」


 翌日、練習前のミーティングの直後に末結が声をかけてきた。話というからには、なにか私だけに聞かせたいことがあるのだろう。特に心当たりはなかったので不思議に思いながら、彼女について部室を出る。廊下の隅まで歩いて、末結は切り出した。


「あのさ。昨日の昼休み、有朱ちゃんが来たでしょ。そのとき……なにかあった?」

「ああ……ちょっと、ね。友だちと一緒だったから」

「それで、有朱ちゃんと話せなかったの?」


 末結は平板な口調で言う。それほど深刻そうには見えないけれど、かと言って気安い感じでもない。ただ、口にしているよりずっと多くのことを考えている風だった。


「……有朱ちゃん、泣きそうになってたよ。先輩に嫌われてるのかもって」

「そう。あとで謝らなきゃね」


 昨日のことだけでなく、これからのことも。たぶん、私は彼女に分不相応なくらいに優しくしてしまっていた。そのことを、ちゃんと伝えなければならない。

 末結は瞳を揺らして、少し考え込んだ。右手で左腕を掴む。なにかを抑えようとしているようにも見えた。


「その友だちって、義河さん?」

「うん」

「義河さんに言われたから、有朱ちゃんと話さなかったの?」

「まあ……そうとも言えるかな」


 私の答えを聞いて、末結は意を決したように私の目を見た。唇を舐めてから、硬い声で、はっきりと言う。


「許子。義河さんとは、少し距離を置いたほうがいいと思う。あの子、ちょっとおかしいよ」


 驚いた。末結が誰かに対してそんなことを言うなんて、まったく想像の外だった。私が呆気に取られているうちに、末結は続ける。


「許子が優しいのは、私も知ってる。あんまりべったりするタイプじゃないけど、でも、ちゃんとみんなのこと大事にしてて……私、許子のそういうところ、すごい尊敬してたから。でも、だからってあんな風に独り占めしようとする子に、全部尽くしてあげなくたっていいんだよ。そんなの、許子が辛いだけだよ。少しずつでいいから、許子のことも尊重してもらえるように、話し合ったほうがいいよ」


 私は唖然としていた。なにを言っているのだろう。尊重? 私を? 流愛が? どうしてそんなことをしなくてはならないのか。


「えっと、その……私は、全然いいの。辛くなんてないし。むしろあの子のほうが、色々あって……だから、」

「だったら、養護の先生とかに相談しなよ。担任の先生でもいいし、誰か、大人の人に言ったほうがいいよ。許子が義河さんのためにそこまでする必要、ないって」


 いや……でも、それは。

 駄目だ。考えられない。駄目だ。駄目だ。駄目だ。胸が圧迫されて、口の中が渇く。足元が抜けるような感じがして、頭の中が真っ白になる。


「でも……友だちだから」


 やっとのことでそれだけを言うと、末結は悲しげに眉を下げて、私の肩に手を置いた。


「そうだよね。ごめんね、こんなこと言って。でも、これじゃお互いに駄目になっちゃうよ。私からも、義河さんに言ってみるから」


 絶句する。流愛が、よりによって吹部の部員から、そんなことを聞かされたら――その行為の結果を想像して、肌が泡立つ。呼吸が止まり、生存本能が誤作動を起こしたかのように視界が異様にクリアになる。末結がいぶかるように少し頭を倒すと、その部分が背景から浮き立って見えた。少し硬そうな黒髪、薄く色のついた肌、探るような瞳――


 もう、なにも考えていなかった。


「だ、だめ。るーちゃんには、私が話すよ。すぐには無理かもしれないけど……ちょっとずつ、わかってもらえるように、するから」


 それを聞いて、末結は優しく笑った。こわばっていた表情を緩めて、長く息をつく。


「うん。ありがとう。ごめんね、おせっかいだったかな」

「ううん……こっちこそ、ごめんね。本当……」


 いいって、別に。そう言って、末結は軽く私を抱きしめた。はにかむように笑って、廊下を引き返していく。どこか人間関係を割り切ったようなところのある彼女にしてみれば、今回のようなことはよほどの決心だったはずだ。頬を染めて口元を緩めたその表情には、友だちのために一歩踏み出せたことへの喜びがありありと表れていた。


「それより、謝るなら有朱ちゃんだよ。ちゃんと仲直りしてね」

「うん。そうする」


 私は呆然と答えて、末結に続いて部室に戻った。先輩たちは先に教室に向かったようだったけれど、有朱は私たちのことを待っていた。期待と不安がないまぜになった眼差しで末結を見る。末結が笑って頷くと、息を呑んで私に視線を向けた。


「ゆい先輩……あの、私……、」


 目を不安げに大きく見開いて、右手でスカートの裾を、左手で髪のひとふさを弄りながら、有朱は上目遣いに私を見る。 そんな有朱と私を、末結が鷹揚に笑って眺めていた。

 私は優しそうに見えるように口角を上げて、なるだけ気安く話しかけた。


「その、ごめんね。昨日は……いや、一昨日も。私、自分のことでいっぱいいっぱいで……有朱のこと、考えてあげられなかった。こんな先輩だけど……たぶん、有朱が思ってるような、優しい先輩じゃないけど。それでもよかったら、また、仲良くしてくれる?」


 有朱は涙をこらえるように唇を結んで、しがみつくように私に抱きついた。手繰り寄せるように何度も背中を掴んで、全身で私の体に縋りつく。細い腕。小さな体。まだ、ほんの一年生なのだ。そんな当たり前のことを、私はようやく実感した。


「よかった……よかったです。嫌われちゃったかと思った。私のこと、嫌だったのかなって。うざかったかなって。すごい、怖くなっちゃったの……」


 私の胸に埋められた有朱の頭から、鼻をすする音が聞こえてくる。声はすっかり涙に濡れていた。構わず、私はその小さな頭を優しく撫でる。


「先輩。先輩は、優しいですよ。優しくて、頼りになって、安心できて――私、先輩がゆい先輩でよかったです。私のほうこそ、お願いです。私、がんばるので……いい後輩に、なるので。だから、仲良く、してください」

「……喜んで」


 そう言って、ぽんぽんと背中を叩くと、有朱はゆっくりと顔を起こした。涙はすべて流しきってしまったのか、潤んだ目はどこかすっきりと澄んでいた。

 目が合うと、有朱は照れくさそうに笑みをこぼした。


「えへ。なんか、全部言ったらすっきりしちゃいました」


 腕をほどいて、一歩下がる。後腐れのないさっぱりとした笑顔が、酷く尊く思えた。


「行きましょうか、ゆい先輩。先輩たちが待って……あっ」


 言いかけて、有朱はピシリと固まった。


「わあっ、ゆい先輩、びしょびしょ……すみません、私っ!」

「いや、いいよ。気にしないで……」


 ころころと変わる表情がおかしくて、私は苦笑する。同じような表情を浮かべながら、末結はティッシュを差し出した。


「ほら、許子。これ」

「ありがとう」


 紙を一枚取って、私は胸の辺りを擦った。白いティッシュは、じわじわと涙の跡を吸い取って色を濃くしていく。

 ざっと水気を拭き取って、ティッシュを末結に返した。あとは自然乾燥に任せよう。部活が終わるまでには、乾いてくれるはずだ。


「勲章だねえ。仲直りの」


 末結はそうからかいながら、ドアのほうに歩を進めた。


「じゃあ……行きましょうか」


 有朱は少しバツが悪そうにそう言って、私の手を引いた。


 まるで自分の手ではないかのように、現実感がなかった。


――――――


 有朱はしきりに一緒に帰りたがったけれど、流愛との約束をなんの伏線もなく反故にするわけには行かない。事情を知る末結が率先してとりなしてくれて、私は今日のところは流愛と一緒に帰ることが許された。


 待ち合わせは、前と同じ場所。


 駅に近づき、夜道に人工の明かり増えていくたびに、足取りは重くなった。お店の電飾にアーケードのライト、等間隔に置かれた街灯の光さえも今日は刺々しい。


 流愛はやはり先に待っていた。カラーシャツにワイドパンツという、例によってラフな服装。私を見つけると手を振って、ぱっと華やぐような笑顔を見せた。


 私は少し早足になって、流愛の横に並ぶ。艷やか髪が人工的な光を反射して、輝いているように見えた。


「お疲れ様、とこ」

「ん。どーも」


 私は軽く言って、流愛の少し先を歩く。靴がアスファルトに擦れるざらついた音が、いやに耳についた。流愛は特に不思議がるでもなく、私のあとをついてくる。

 こめかみの辺りに、ずっと流愛の視線を感じていた。別に、はじめてのことじゃない。特になにはなくとも、流愛はいつも私を見ている。


 街並みが繁華街から住宅街に変わる頃、流愛は何気ない口ぶりで訊ねた。


「ねえ、私のこと、吹部の子たちに話してくれた?」

「うん」


 迷うのが一番まずい。そう思って、私は頷きだけを返した。流愛の黒目がちな大きな瞳が、私を見ている。不愛想とも取れる私の返答に、しかし流愛は嬉しそうに笑った。


「そっか。これで安心して一緒にいられるね」

「そうだね。まあ、別に大して不安でもなかったけど」

「なに言ってるの。邪魔が入ったら、とこだって困るでしょ」


 そうだね、と繰り返して、私は顔を前方に戻した。横目で見る流愛の顔は、影が落ちていてわかりにくいけれど、やはり笑っているようだった。


「とこって、私の話ならなんでも聞いてくれるよね。嬉しい。なんか、一番の友だちって感じがして――」


 影が蠢いて、そんなことを言う。私はぼんやりと歩いているふりをしながら、目だけでそれを見つめていた。


「――だからとこも、なにかあったらちゃんと言ってね」


 思わず足を止めて、振り向く。正面から見ると影は消えて、見慣れた流愛の顔がそこにはちゃんとあった。心配ごとなんてなにもないかのような、無邪気な笑み。拒まれるなんて考えられないかのような、無防備な笑み。


 たぶん、彼女はこういう風にしか笑えないのだろう。皮肉で笑うことも愛想で笑うことも、彼女にはできない。彼女の笑顔はいつも、心の底から嬉しそうで、全身を投げ出すようにあけすけで、一点の曇りもない、眩しいばかりの笑顔だった。


 だから、いつも泣いてばかり。


 そんな風に笑えることなんて、本当はないから。


 私の反応をどう思ったのか、流愛は私の腕をとって引っぱった。


「とこ、なんか疲れてない? 大丈夫?」

「うん……大丈夫だよ。るーちゃんが居れば」

「そっか。なら、大丈夫だね。私、どこにもいかないし」


 流愛は私に寄り添うようにして、しばらく歩き続けた。穏やかな息遣いが耳をくすぐる。流愛に手を引かれていると、歩くことはとても楽に思えた。


「……やっぱり、大変じゃない? 部活」


 おもむろに、流愛は言う。


「別に……。まあ、大変ではあるけど、でも、」


 有朱も、末結も居るから。


 そう言いかけて、私は言葉を飲み込んだ。


「私は、そういうのよくわからないんだけどさ。あんまり辛いなら、無理に最後まで続けなくてもいいんじゃない?」


 すぐ耳元で発されたその言葉を、私は舌の上で転がした。口調はいかにも軽い感じで、冗談として流してしまえばそれでいいようにも思えた。


「まあ、別に誰かが引き止めるわけじゃないんだからさ。考えておいてよ」


 流愛はあくまでも気安い風に、そう言った。その声に真剣味はない。本気とは思えない。けれど、本気でも真剣でもないのに、どうしてそんなことを言うのだろう。


「そもそもさ、」


 流愛は明るい声で言った。


「とこ、部活のこと好きじゃないよね」


――――――


 マンションの下で流愛と別れて、スマホを開くと、通知欄の一番上に末結からのメッセージが表示されていた。


「帰ったら、コンビニまで来れる?」


 どきりと胸が疼く。


 断ったほうがいい。

 流愛が気まぐれに位置情報を見れば、それだけで気取られてしまうかもしれない。けれど、口実がない。位置情報のことをそのまま話すのがまずいことくらいは、私にもわかる。


 数秒だけ逡巡して、結局、私は末結の提案に従うことにした。入ったばかりのエントランスを引き返し、再び夜道を歩き始める。


 コンビニに向かう道中、流愛からのメッセージが届いた。


『おかえり! 私も今帰ったよ』


 おかえり、のスタンプでそれに応じる。流愛からプレゼントされたものだ。なにか新しいのを見つけると私にもくれるのだけれど、流愛以外とのやり取りに使うと怒るのだった。


 数往復分、どうでもいいようなやり取りをしながら、私は歩いた。流愛が私と話しているうちは、GPSアプリを開くこともない。だから、つとめて盛り上げるように、それでいて不自然にならないように、できる限りの注意を払った。


 イートインスペースは窓際にあって、よく見ると座っている人が見える。私は二人分の人影を認めて、早足になった。

 自動ドアをくぐると、末結がまっさきに反応する。


「許子、こっちこっち」


 横並びの席の一番端に座った末結が、私を手招きした。その隣に、有朱がちょこんと座っている。真ん中にはチョコシューの袋が開けられていた。


 私は有朱のそのまた隣に腰掛ける。短いツインテールを揺らして、彼女は笑った。


「先輩、シュークリームありますよ。ほら、あーん」

「あ、あー」


 有朱の指を噛まないように私はそっと舌で受け取った。なんだか最近、物を食べさせられてばかりな気がする。猫にでもなった気分だ。


「ゆい先輩、来てくれたんですね」


 椅子の上に置いた私の手に、有朱は手を重ねる。嬉しそうに頬を染めて、目を輝かせた。


「うん……有朱もいると思ってたから」


 つい、私は流愛に対するような台詞を吐いてしまう。有朱はぱっと笑顔を浮かべ、末結は口笛を吹いた。


「わあ、お熱い。いつの間にそんなラブラブになっちゃったの」

「ふふ。私、先輩にハグしてもらっちゃいましたから」

「泣いちゃったしね」

「もう、汝鳥先輩」


 有朱は甘えるように末結に肩をぶつけた。末結も笑ってそれに応える。

 そのとき、スマホにふたたびメッセージの着信があった。流愛からだ。私はさりげない動作でロックを解除し、返信を打ち込む。


「許子。せっかくだから、有朱ちゃんのことどこか誘ってあげたら? お詫びとしてさ」

「そんな、私、全然怒ってなんて……早とちりしちゃいましたし、泣いちゃいましたし……」


 有朱は恥ずかしそうに目を白黒させた。


「いや、いいよ。先輩だからね。なにかさせて?」


 言いながら、私はなんでもないような仕草で流愛とのやり取りを続ける。別に、見咎められるようなことではない。話しているときにちょっとスマホを触るくらいなら、私たちの間ではしょっちゅうだ。


 私の返事を受けて、有朱はちょっと戸惑うようにした。スマホは末結からは陰になっているので、彼女が何も言わなければ、流愛にもなんら不自然に思われることはない。


「ゆい先輩――」


 画面が隠れるようにスマホを傾けて、流愛の返信を待っていると、有朱がそう呼びかけた。もの問いたげな目をして、ちょっと首を傾げて、私に訊ねる。


「――あの、いまって、お金ありますか」

「……お金?」


 虚を突かれた思いで、私は聞き返す。危惧していた言葉ではなかったけれど、意味を取ることもできなかった。


「ほら、先週、言ってたじゃないですか。チーズケーキが美味しいお店に行ったって。よかったら、先輩と行きたいな~って……」


 私は一瞬言葉に詰まる。その隙に、末結が声を上げた。


「え~、いいじゃん。行ってきなよ」

「あ、でもその、都合が悪かったら、全然……。ほら、カラオケとか、映画とかでも」


 有朱は手を振って、恐縮したように言う。そのとき、流愛からの返信が届いた。その文面を確認する前に、さらに次のメッセージが表示される。


『今通話でれる?』


「うん、いいよ。明日行こっか。喫茶店……ああ、でも、やっぱりちょっと混むかもね。遅めに行くか早めに行くかしたほうが、いいかも」


 いかにもついでのようにどうでもいい情報を補足しながら、私は流愛への返信を打ち込む。


『ごめん、今日はちょっと元気ないかも』

『やっぱり、疲れちゃったかな…』


 言い終わる前に送信して、スマホを置く。有朱は私の言葉を受けて、感激したように手をとった。


「ありがとうございます、先輩! 私、楽しみにしてます!」

「そんな大げさな……。待ち合わせとかは、帰ってから決めよっか」

「はい!」


 手を叩いて喜ぶ有朱に、私はわざとらしく肩をすくめて、ふたたびスマホを見る。通知欄には、やはり流愛からのメッセージが表示されていた。


『ほんとに?』


 どくん、と。


 心臓が強く拍動した。


 しかしすぐに、


『超心配なんだけど。ゆっくり休んでね。ご飯とかお風呂とかは、ちゃんとやれそう?』


 と続く。私は息をついて返信を考えた。


『大丈夫。たぶん、体力ないだけだよ笑 お風呂入ったら、今日はもう休もうかな』


 おやすみなさいのスタンプを見て、私はスマホをポケットに戻す。会話を打ち切るのは家に戻ってからにしたかったが、仕方ない。まさか、この流れで位置情報を確認しようとはしないだろう。そう思う。そう思え。


「あっ、そうだ。汝鳥先輩は、その……」


 有朱はちょっと気まずそうに末結のほうを見る。末結は笑って、


「いやいや、二人で行ってきてよ。せっかく応援してるのに、私が行くわけないじゃん」


 と言った。


「私は二人が……っていうか、周りのみんなが仲良くしてくれたら、それで満足なの。だから、私にはそういう遠慮はしないでいいから。ね?」

「はい、ありがとうございます」


 有朱の末結を見る目が、尊敬のまなざしに変わった気がした。


 彼女の言うことは、たぶん本当だ。彼女の望みはなによりも他人の満足で、末結自身には、これと言って強く求めるところがない。そういうところは、確かに私と少し似ている。


 まったく違うけれど。


「ま、そういうことなら今日はこの辺にしよっか。楽しんできてよ」


 末結はチョコシューの残りを口に放り込むと、そう言って席を立った。


「はい、ありがとうございました……って、あぁっ、シュークリーム!」

「いいじゃん。お菓子は明日食べるんだから」

「明日はシュークリームは食べられないんですよ、もう!」


 有朱は頬を膨らませて言う。どうやら彼女のチョイスだったらしい。らしいな、と思いながら、私も席を立つ。


「じゃあ、また明日ね」

「あ、ゆい先輩。はい、また明日」


 私の帰り道は、末結と有朱と反対方向だった。有朱はしばらく名残惜しそうに振り返り、目が合うたびに小さく手を振った。私もそれに応えながら、曲り角までゆっくりと歩く。二人の視線を切ってから、私は早足で帰路を急いだ。

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