その背中を見てずっとあこがれていたんだ

さいとう みさき

大人になったら、なんになる?

 小学生の頃、何になりたいか作文を書かされた。


 国語の授業で言い渡されたそのお題に、周りの友人たちはあれやこれやと夢を膨らませ、サッカーの選手になるとかユーチューバーになるとか、親からは公務員になれとか言われてた子もいた。


 出来る出来ないは別として、夢を恥ずかしくもなくかたらいでいた。

 

 僕も作文用紙に鉛筆をのせ、何になりたいか書いてみた。





 そう書いてみて、テレビなどで出てきたヒーローたちに心を躍らせ、そのことをに書いた。

 しかし後で担任の先生に呼びだしされて怒られた。



「さいとうくん、みんな真面目に将来何になりたいか書いているのよ? こういった悪ふざけはよくないですよ?」


「でも先生、僕は将来『正義の味方』になりたいんです!」


「それは職業ではありません。正義の味方になると言う気持ちは大切です。でも、さいとうくんは大人になったらちゃんと仕事を見つけて、そして立派な大人にならなくてはいけないんですよ?」


「でも……」


「とにかく、ちゃんとした何になりたいかを書き直しなさい。いいですね?」


「……はい」



 先生にそう言われ、僕は真っ白な作文用紙を渡された。

 でも、僕がなりたいのは「正義の味方」。

 悪いやつをやっつけて弱い人たちを助ける。

 そんなヒーローにあこがれていたんだ……



 * * *



『今、容疑者が警察に連行されて出てきます! あ、こちらを見ています!!』



 報道陣が俺を撮影している。

 俺は思わず手錠をされているにも関わらず、笑顔で両の手をあげて手を振る。

 途端に警官に取り押さえられ、引っ張られてゆく。

 しかし、俺にはみんなにこたえて叫ばなくてはいけない。

 だって俺は「」だから。



「みなさん! 悪い政治家は俺が始末しました!! これで日本は平和になる、悪い連中は『正義の味方』の俺が必ず倒す!!」


 

 俺のその声に周りでその様子を見ていた人々は沈黙をする。

 俺のしたことに感動しているんだ。

 そしてそのまま警察の車に乗せられる。



「何が正義の味方だよ、議事堂を爆破してほとんどの政治家を始末した凶悪犯が」


「前代未聞の事件よね。議員と関連者がほぼ亡くなったものね」




 俺は俺に何かを言って、感謝している人々を車の窓から見るのだった。


 

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その背中を見てずっとあこがれていたんだ さいとう みさき @saitoumisaki

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