KAC20252 あこがれ

@wizard-T

あこがれ

「どうしたんだよ、Aランク冒険者様がよ」


 そんな事言われてもボクの心には響かない。


 今、ボクはあの人の事で頭がいっぱいだ。


「んなむくれちまって、英雄様が台無しだぜ」

「帰ります、報酬もびた一文要りません。こんな町に未練はありません」


 噓偽りのない本音をぶちまけたらパーティーが一瞬にして大騒動に。スタンピードからこの町を守り切ったのがどこの誰だか知らないで何様のつもりだか。

「だったらすぐさま謝って来てください、それとも今すぐあのお人をAランクにするか、そこのボンクラをクビにして下さい」

「いや、でも、その、えーと…」

「3、2、1……」

「わ、わ、わかりましたぁ!真の英雄であるあのお方様にAランクの称号を与えますぅぅぅぅ!!」


 やっとわかったらしい。間近で見ていたボクがあんなに言ったはずなのに誰も彼もそんな訳ないだろって、仮にもボクは冒険者学校を首席で出たエリートのはずだ。そして五番目だけど子爵の子だ。


 そんな存在を井の中の蛙だと教えてくれたあの人を軽視するような奴らはもう知らない。少しばかり子供の遊びみたいな炎魔法を集中してやったらこの有様。民を無下にするなと父上たちは言ったけど、こんな民ならばと思いもしたくなる。




「トリの降臨……!」


 数百匹単位のモンスターを相手に軽く鼻を鳴らしてそのにおいを感じ取り、その場にふさわしい使い魔を召喚する。いやあれは使い魔なんて生易しいもんじゃない、精霊、いや神。


 もしその力を認められないのだとしたら、あまりにもあっけなく全てを終わらせてしまったからか。それとも自分たちよりずっと格下のはずの存在があんなに活躍してしまったのが悔しいだけなのか。前者はまだともかく後者についてはバカとしか言えない。

 小さなトリに見えたけど、その羽ばたき一つで数百の魔物が浮かび上がり、そのまま次の一撃で炎に包まれて黒焦げになった。ものすごい事だ。あまりにもすごすぎてインチキとか思われたのかもしれないけど、それでもあんな成果を上げておきながら何ひとつ威張ろうとしないその姿はまさに理想の冒険者じゃないか。


 だからボクは追いかける。その人を。

 あんなバカな人たちにもう愛想を尽かしたのかどこかへ行ってしまったみたいだけど、ボクは絶対に追いかける。


 そして絶対こう言うんだ。




「弟子にして下さい!そして、お嫁さんにして下さい!あ、側室でもいいですから!」

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