雛同士の雛祭り
ゆうき±
第1話 雛と執事
「ひなまつり、やってみたいな」
ふとお嬢様であるリニア・カルベーヌは蒼く透き通るような瞳で空の雲を見ながら呟くようにそう言った。
「……今なんと?」
僕がそう言うと、彼女は頬を紅く染める。
普段彼女は自分がやりたいことを言わない為、恥ずかしかったのだろう。
だが、僕は逆に嬉しかった。
普段我儘を言わないお嬢様が「しなければならない」ではなく、「やってみたい」と口にしたのが嬉しかったのだ。
「何でもないわ、忘れて」
僕の問いかけに帰ってきたのはそっけない態度だった。
「なんですか? 教えてくださいよ」
僕はそう言って膝をついて彼女に視線を合わせ、問いかける。
空のように蒼い瞳に白く透き通るような綺麗で長い白髪風で靡かせる彼女の目をじっと見つめると、彼女は頬を染め視線を逸らす。
そして彼女は再びこちらに視線を向けると、震える口ぶりで口を開く。
「内緒、よ?」
「えぇ、わかってます」
「その、ね……ひなまつりっていうのがあるらしいの」
ひなまつり、聞いたことないな。
「私も詳しくは知らないんだけど、年に一度それにまつわる魔道具が出るらしいの」
その話は聞いたことがある。
古代魔道具で、年に一度だけ異空間への扉を開くという特別な魔道具とされている。
加えてその魔道具に相応しいとされる者だけがその異空間にはいる許可が下り、その期間が過ぎるとその力は遺跡に帰るという伝説だ。
「それが欲しいっと?」
そういうと彼女は恥ずかし気に頷く。
本来なら商人から手配するという手があるが、今回ばかりはお嬢様でも手に入らないだろう。
物も高価で手に入れる事は出来るだろうが、彼女が異空間に入る確実性がないので彼女にとっては無駄と感じてしまうのだろう。 我慢することないのにな。
「でもいいの、今すぐにやりたいわけじゃ……」
そう言って彼女は悲しそうにする。
彼女はそうやって自分のやりたい事、したい事を我慢する。
ずっと見てきたからこそわかる、彼女は我慢している事がなんとなくだがわかるのだ。
「そうですか」
これ以上言っても彼女は変わらない。
昔から合理的に動けと、必要な事だけをやれと言われてきた。
我儘も不合理も全て彼女は押し込めて生きてきたのだ。
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そうして僕はその日の晩、僕はその魔道具について調べていた。
文献曰く、女の子の健やかな成長と幸せを願う催しと書かれている。
小さな鳥や人の人形、文献ではひな人形と呼ばれるそれが台に立ち並んでいると書かれている。
選ばれたとされる女の子の不治の病が治ったり、身体の弱い子が健康になったとさえ言われているそうだ。
一種では女神の祝福の可能性とも書かれていて謎多き魔道具のようだ。
文献を調べていくと、その魔道具が出土するのは次の週が有力と書かれていた。
スケジュール帳を開くと、丁度来週は休暇が二日ある。
その間に探し出さないとな。
全ては不器用なお嬢様の願いを我儘を叶えるためだからね、頑張らないと。
雛同士の雛祭り ゆうき± @yuuki0plus
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