第7話 禁断の愛と消える奇跡

 「人間を愛すると、神の運は消える」


 ——それが、彼の運命だった。




「……なんで、そんなこと、もっと早く言わないの?」


 私は、震える声で問い詰めた。


 「言えば、君は俺を避けようとするだろう?」


 彼は静かに微笑んでいた。でも、その微笑みはどこか儚くて、消えそうだった。


 「避けようとする、って……そんなの当たり前じゃん!」


 私は椅子から立ち上がる。


 「だって、私と一緒にいるだけで、君の力が弱まるんでしょ!? ……だったら、私、もう君と会えないよ……」


 「それでもいいのか?」


 彼はまっすぐに私を見つめた。


 「君が本当にそう思うなら、俺は何も言わない。でも——」


 彼は私の手をそっと握った。


 その瞬間、温かいはずの手が、どこかひんやりとしていることに気づいた。


 ——いやだ。


 私は、彼が消えてしまうなんて絶対にいやだ。


 「私が君を好きになったせいで、君が消えるなんて……そんなの、間違ってる……!」


 「間違ってなんかいないよ」


 彼は、優しく言った。


 「神が人間を愛するというのは、奇跡に反することなんだ。神の運は、人間のためにある。だから、神自身が愛に溺れると、その運は消えていく」


 「……そんなの、理不尽すぎるよ」


 「理不尽かもしれない。でも、それが神の掟なんだ」


 彼はそっと私の髪に触れた。


 「でも、不思議だな……君といると、俺は少しだけ人間に近づいた気がする」


 「……え?」


 「もし俺が完全に人間になれたら——」


 彼は、そこまで言いかけて言葉を止めた。


 「……いや、なんでもない」


 私は彼の顔を見上げた。


 「もし、人間になれたら、どうするの?」


 「君と、同じ未来を生きてみたい」


 その言葉を聞いた瞬間、胸がぎゅっと締めつけられた。


 「でも、それは叶わない願いだ」


 彼はそう言って、少しだけ寂しそうに微笑んだ。


 ——神の運が、消えていく。

 ——彼は、消えてしまうかもしれない。


 どうすればいいの?

 どうすれば、彼を救えるの?


 私は、奇跡を起こしたいと願った。

 でも、彼はもう奇跡を起こせないほど、運を失いかけていた。


 このままでは——




 「君が俺を忘れれば、俺は消えないかもしれない」


 「……え?」


 「君の気持ちがなくなれば、俺は神のままでいられるかもしれない」


 そんなの、そんなの……


「そんなの、いやだよ……!」


 彼のことを忘れるなんて、できるはずがない。


 でも——


 もし、それが彼を救う唯一の方法だったら?


 私は、決断を迫られていた。


 ——愛する人を救うために、愛を捨てるか。

 ——愛を貫いて、彼を失うか。


 私は、どうすればいいの?

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