第8話 運命を変える方法

 ——彼がいなくなる未来を、防ぐには?

 ——彼の運が消えてしまうなら、私が代わりにそれを取り戻せばいい。




 「運の神様にできないことがあるなら、それを私がやる」


 そう言った瞬間、彼の瞳が揺れた。


 「……君に、そんなことをさせるわけにはいかない」


 彼は静かに首を振る。


 「それに、どうやって ‘運’ を取り戻すつもりだ?」


 「……わからない。でも、私は運を貯める方法を君から教わった。なら、今度は私が ‘運を使う方法’ を見つける番だよ」




 彼と出会ってから、私は少しずつ運の流れを感じられるようになった。

 小さな奇跡が続いたことも、彼が私のそばにいてくれたから。


 でも——


 「君の ‘運’ は、もうほとんど残っていないんでしょう?」


 私が問いかけると、彼は静かに目を伏せた。


 「……ああ、そうだ」


 やっぱり。


 人間を愛した神は、奇跡を起こせなくなる。

 それが掟なら——


 「私が ‘神様’ の代わりに、運を集める」


 「……何を言っている?」


 「だって、運って ‘貯められる’ んでしょう? だったら私が貯めて、君に渡せばいいじゃない!」




 彼は呆れたようにため息をついた。


 「そんなに簡単なものじゃない」


 「でも、方法がないわけじゃないんでしょう?」


 彼は沈黙した。


 「ねえ、あるんでしょう? 運を ‘渡す’ 方法が……!」


 私は彼の手を握った。


 「君は、何があっても俺を助けたいのか?」


 「……当たり前でしょ」


 「たとえ、それが ‘自分の運命’ を犠牲にすることになっても?」


 「……え?」




「君が ‘人間としての運’ を捨てる覚悟があるなら……方法はある」


 彼は、ゆっくりと言葉を続けた。


 「それは—— 君が ‘運の器’ になること だ」


 「運の器……?」


 「簡単に言えば、君自身が ‘運を生む存在’ になるということだ」


 「……それって、つまり?」


 「今のままの君では、俺に運を渡すことはできない。だけど、君が ‘運を集める体質’ になれば—— 俺の力を取り戻すことができるかもしれない」


 「……私が、運の神になるってこと?」


 彼は静かに頷いた。


 ——私が、運を操る存在に?


 そんなの、想像もしたことがなかった。


 でも……


 「もし、それが君を助ける方法なら、私はやるよ」


 迷いなく、私はそう答えた。


 彼は、ふっと微笑んだ。


 「……やっぱり、君は ‘運’ の流れを変えられる人間なんだな」




 「運の器になる方法は、一つしかない」


 「なに?」


 「 ‘運の神’ のすべてを、受け入れること」


 「……それって?」


 彼はそっと、私の手を握った。


 「俺と、 ‘契約’ を結ぶんだ」


 その瞬間—— 私の体が、まるで光に包まれるような感覚に陥った。


 —— 私が ‘運命’ を変える番だ

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