第6話 運命の分かれ道

 ——この恋は、成就率0%。


 そう宣言した彼を前に、私はただ黙っていた。


 それでも、彼と一緒にいたいと思ってしまうのは、やっぱり私の運が悪いせいなの?




 「君が俺と一緒にいることを選べば、君の“運”は狂い始める」


 静かなカフェのテーブル越しに、彼はそう告げた。


 「……どういうこと?」


 「運は流れだ。川のように、自然と道を作りながら進んでいく。人間は、その流れの中で生きている」


 彼はゆっくりとカップを置き、私を見つめた。


 「でも、俺といることで、君の運の流れは変わる。自然な川の流れが、ダムを作られて歪むように」


 「……それって、悪いことなの?」


 「悪いこととは限らない。でも、予測できなくなる」


 彼の言葉は、どこか切なかった。


 「君が本来たどるはずだった未来が、変わってしまうんだ」


 「変わるって……どんなふうに?」


 「それは俺にも分からない」


 彼が神様であるのなら、未来のことも分かるんじゃないの? そう思ったけれど、彼は首を振った。


 「人間の運は、流れによって変化するものだ。俺が手を加えれば、道が変わる。でも、それがいい未来になるか悪い未来になるかは、誰にも分からない」


 「……そんなの、怖いじゃん」


 「そうだよ」


 彼は淡々と言った。


 「だから、選ばなければならない。君は——俺と一緒にいたいのか?」


 その問いに、心臓が大きく跳ねる。


 「私は……」


 迷ってはいけない。


 でも、迷わないなんて無理だった。


 彼と一緒にいることで、私の運命が変わる?

 今までの不運続きの人生が、もっとひどいものになるかもしれない?


 それでも……


 「私は——」


 言葉を飲み込んだ、その時だった。




 カラン、と店のドアが開いた音がした。


 「すみません、ここに携帯の忘れ物は……?」


 振り向くと、そこには見覚えのある男性が立っていた。


 「……え?」


 驚いた。


 まさか、こんなところで彼に会うなんて——


 数年前、私が片想いしていた相手。

 でも、一度も勇気を出せず、結局何も起こらずに終わった恋。


 「……久しぶり?」


 彼は私に気づき、微笑んだ。


 私の心がざわめく。


 まるで、人生のもう一つの道が目の前に現れたような——


 「彼とは、ここで会う運命だったんだ」


 隣から、彼の静かな声が聞こえた。


 「もし君が俺と会っていなかったら、今ごろ彼と再会していたんじゃないかな」


 「……!」


 「これが、運の分かれ道だ」


 私は、どちらを選ぶの?


 ——運命に導かれる恋か。

 ——自分で選び取る恋か。

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