スポットライトを浴びてステージに咲き誇る輝かしい存在。見る者に勇気と希望と夢を与える象徴。それがアイドルと捉える方は多いでしょう。

しかしその裏で、光の当たらない側面で精神をすり減らし、思い悩み、次第に蝕まれていく心と身体もまた存在します。それはある種の残酷なシーンとして映ることでしょう。
　この小説の優れている点は、光があるところには必ず陰が存在する事実をアイドルという『人間』に落とし込み、その双方においてリアルで強かな筆致で見事に描いているところです。
ダークサイドの昏い波が引き寄せる展開に目を見張り、これでもかと追い詰められていく切迫感も魅力的です。
是非その引き込もうとする見えない力を感じてください。