ひなまつり(KAC20251)
小椋夏己
おひなさまケーキの思い出
2025年3月3日月曜日、妹から写真つきのメッセージが届きました。
「今日お寿司とケーキしたよ」
写真にはお寿司はなかったんですが、おひなさまと共にかわいらしいケーキが並んでいました。ひし餅型のケーキの上に、砂糖菓子か何かのお内裏様とお雛様、3月にはよく見かけることがあります。
その写真を見ていて、ふと、思い出したことがありました。
「そういや小さい時にもこういうケーキ買ってもらったな」
記憶の糸をたどると幼稚園に入ったか入る前かそのぐらいの時期のことです。私の記憶が確かならひし餅型ではなく四角かったような気がします。上に乗ってるのも砂糖菓子というより、もうちょっと大きなおひなさまのお人形というような、なんだろう、クリームとかで作ってあったのかな。そういうタイプだったと思います。
そのおひなさまのケーキをですね、幼かった私は、
「食べるのかわいそう」
と思ったんです。
子どもってそういうことありますよね、顔が付いてたり動物が付いてたらかわいそうで食べられないというの。前に近所の小さい男の子がたい焼きを尻尾から食べて顔の部分をかわいそうと残してお母さんに渡したら、てっきりもういらないとくれたと勘違いしてぱくっと食べて、その子が号泣したことがありました。
その時の私もその子のたい焼きと同じように、おひなさまかわいそうと思って食べられなかったんですが、何しろ食い意地が張ってるもので、大好きなケーキは食べたい、でもかわいそうの間で悩みました。
そうして悩んだ結果、私が出した結論はこうです。
「おひなさまだけ残せばいい」
ということで、そのケーキを後ろからほりほりと掘って、前のおひなさまの部分を崩さないように見ながら寸止めまできれいに食べて、前から見たらおひなさま、後ろから見たらケーキはないよという形に仕上げました。
この時のことはとてもよく覚えてます。何度も前や横から見ながら、フォークでほりほりして食べ進めていきましたから。
さて、そうやって食べた記憶はあるけど、その後そのケーキがどうなったかは記憶にない。というか、もしかしたらそんなことをしてたのすらその後は忘れてたかも知れません。おそらくおひなさまだけ残せてそれで満足してしまったんでしょう。
それで母に聞いたのか、もしくはおひなさまの時期に母が思い出して話したのかは分かりませんが、もっと大きくなってからこの時のケーキの話題になり、顛末を聞きました。
「カビが生えたから捨てた」
あっさり母の一言です。
ただしその時にはもう「うえーんかわいそうだー」という時期も過ぎていたんでしょう、「そうなのか」とあっさりとこちらも受け止めてそれだけで終わりました。
しかし今にして思えば、そんなことを許してくれた親もすごいなと思います。さっさと食べて片付けてほしかろうに、ちまちまとおひなさまを崩さないようにスポンジやクリームの部分を食べ終わるまでほっといてくれて、その後、そんな食べかけのケーキをカビが生えるまで置いておいてくれたんですから、こりゃもう感謝ですね。
ただし、その後でおひなさまのついたケーキを買ってもらった記憶がないので、親もこの時で懲りて妙なことをされそうなケーキを避けたのかも知れません。
うーむ、なんかこんなことを書いてたらおひなさまのついたケーキを食べたくなってきた。でももう今年は売ってないだろうから、来年覚えていたらおひなさまケーキを買ってみようかな。
もちろん今だったら遠慮なく頭からがっつりいけます。残してカビが生える方がかわいそうだと分かってますから。
でもちょっと調べてみたら、当時私がほりほりしたようなタイプのおひなさまケーキって見かけません。どれも妹が送ってきたような、小さなかわいらしいおひなさまか、それっぽいクッキーが乗ってるだけ。
こういうのも時代によって違うのかなあ。来年、忘れないようにあっちこっちのケーキ屋さんを覗いてみよう。そして当時のようにほりほりしてみたい。もちろんカビが生えるまえに責任もって食べ尽くしますが。
ひなまつり(KAC20251) 小椋夏己 @oguranatuki
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