第2話 転生した場所は?

 とりあえず上から降ろし、脱ぎ散らかされた服を着させた。


 それは豪華で重厚感のある和装だった。

 って、これ……十二単じゅうにひとえってやつか?

 意味が分からないけど、穂乃花は動きづらそうなこの服を普通に来た。


 そして俺も……



「俺の服は?」

「ないわよ?」

「はっ?」

 どういうことだ?

 

 よく考えろ俺……。

 一度死んだ俺がなぜかここで生きてる。


 これはもしかしてあれか?

 転生ってやつか?


 こんな和服みたいなものがある世界に転生したってことか?

 だとしたら今まさに生まれ落ちたところなのか?

 それとも実は穂乃花は転生の説明をしてくれる神様で、俺はこれから転生するのか?

 その前にちょっとつまみ食いされたとか?



「ごめんなさいね」


 それは何に対しての謝罪なんだ?

 襲ったことか?

 それとも殺したことか?

 そう言えばこいつ……先輩のことも刺してなかったか?


 思い出すと途端にぞっとした感覚が背後に現れる。



「はぎ取るのも面倒だったから消したわ」


 服のことかよ!?

 今、そこそんなに気にしてないから!

 もっと衝撃的で大事なことがあったから!!!





「えっと、だから……って、なんだ!?」

 

 穂乃花に対して文句を言おうとしたその瞬間。

 急に俺の口が閉じ、体が勝手にどこかに向かって動き始めた。


 さらに、なにか布の群れが飛んできて視界が埋まる。



 そして扉のようなものをくぐって辿り着いた先には、赤くて段組みがなされた部隊のようなものがある。


 「「「「きゃ~~~~~」」」」


 そして俺を見て騒ぐ女の人たち。

 みんなまるで平安時代のような衣装だ。


 彼女たちが俺を見て……って、まだ半裸だったわ。

 そりゃあ騒がれる。


 でも体は俺の思うようには動かない。

 ふと見ると、隣には穂乃花がいる。彼女も視線と違う方向に歩いている。まるで俺と同じように動かされているようだ。


「なんだこれ……」

「見たらわかるでしょ?」


 しかし俺の疑問は一蹴される。

 その表情は本気でわからないかのようだ。


「まぁ、はじめてならそうかもね」


 そんなことを言いながら段組みを駆けあがり、穂乃花が座る。


 その隣……空いたその場所に、俺は座った。


 その時には俺も立派な和服を着ていて……って、これおい!?


「ひな人形じゃねーーーか!!!?」


「やっと気づいたの?」

「まぁ、お内裏様。ようやく気付いたのね」

「かっこいいわね……ちょっと良いかも」

「……あの……よろしくお願いします」


 呆れたと言わんばかりの穂乃花に続いて、一つ前の段にいる3人の女性が顔をこちらに向けて声を発してきた。


 どう見ても三人官女ってやつだよな?

 ちょっとずつ姿が違うけど、そもそも男兄弟しかいない俺はひな人形をじっくり見たこともない。つまり、差がわからない。


 なんて呼べばいいのかと聞きたいが、もう口も動かなくなった。









「わぁ~、きれいだね。ママ。凄いよ!」

「よかったわね、ほのちゃん。お爺ちゃんたちが買ってくれたのよ」

「ありがとう、おじいちゃん、おばあちゃん」

「うんうん。喜んでもらえてよかったよかった。本当は生まれてすぐに買ってあげられれば良かったんじゃがな」

「いいのよ、お父さん。ほら、喜んでるし」


 俺達を眺めてくる巨大な女の子……意味が分からん……。


 なんだよこれ……。



 幸い、段組みのされているひな人形であるにもかかわらず、さらに大きな透明の……ガラスケースだよな? ……に入れられている俺たちは、この巨大な女の子に直接触れられることはない。


 もし触れたら、持ち上げられて手や足を変な方向に曲げられたり、首を引っこ抜かれそうだけど、そんなことにはならないらしい。


 しかし凄まじいプレッシャーだ。

 巨人の前に並べられた人間の構図だ。



「3月3日にはひな人形を前にお祝いしましょうね」

「わ~~い♪」


 今がいつなのかわからないけど、3月3日ではないらしい。





 そのお祝が終わったら俺達片付けられてしまうのかな?


 

 そしたら俺達どうなるんだ?

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