博士の成功

OROCHI@PLEC

博士の成功

 あるところにO博士がいた。

 彼は反重力装置を作り、歩く速さが二倍になる靴を作った。

 そして彼は履いたら一日に一回必ず転ぶ靴を作り、飲んだら確実に死ぬ毒を作った。

 人々は彼に聞いた。

 

 どうしてあなたは最高な発明から最悪の発明品まで作るのか。

 彼は言った。


「私は重力が増加する装置を作ろうとした。私は足が少し遅くなる靴を作ろうとした。私は転ばなくなる靴を作ろうとした。私はどんな病気も治す薬を作ろうとした。だが、全て逆のものができてしまった。けどそれで良い。最高と最悪は紙一重の存在だからな!」


 そう言ってO博士は笑い、周りの人はため息を吐く……と思いきやため息を吸った。

 

 ある日、O博士は家で発明品のアイデアをメモ用端末に書き出していた。


「細胞分裂の限界を無くす薬、どんなものも硬くできるような硬化剤……」


 すると彼に電話がかかってきた。

 彼は家にある電話用端末のところまで行き、電話に出た。

 相手はS博士だった。


「もしもしO博士かい? 今度の土曜日、完全没入型映画館に行かないかい? 新しいSF映画が出たらしいんだ」


「やあS博士。もちろん行くよ。確か一つのアーティファクトが世界を滅ぼす話だったよね。今から楽しみだよ」


「ははは。そう言ってテレポート装置があるのにも関わらず遅刻しないでくれよ。じゃあXX時に映画館前で会おうじゃないか。予約はこちらでしておくよ」


「ああ」


 そう言って電話を切る。


「さてと、用意を今のうちにしとかなければ。金銭管理用端末に食料合成用端末、念のため電話用端末も入れて……。用意するものが多くて大変だ……」


 そして彼は突然思いつく。


「そうだ!全部一つにまとめてしまえば良いんだ!まとめたら時間の節約にもなるし、一つの端末だけで何でも出来るようになる。きっと夢のような発明品になるに違いない!どうしてこんな簡単なことを思いつかなかったんだ!」


 そう言って彼はドタバタと材料を集め始める。 

 彼は知らない、それは多大な時間を浪費させる発明品であることを。

 彼は知らない、それによって人は何もできなくなってしまうことを。

 彼は知らない、それは悪夢のような発明品であることを。


「せっかくだし、動画や自分の意見などを全世界に発信出来るようにしよう。きっと良い娯楽になるはずだ」


 彼は知らない、それによって多くの人が傷つくことを。

 彼は知らない、それが世界を混沌に陥れることを。


「さてと、完成させるのが楽しみだ」


 楽しそうに作り始めた彼は知らない、実は過去に同じものがあったことを。


 彼は知らない、それによって過去に人類は絶滅しかけたことを。

 彼は知らない、これは繰り返されていることを。

 彼は知らない、この世界はX回目の世界であることを。


 彼は知らない、彼の作ったものが、また、人類を滅亡に導こうとしていることを。


「完成したぞ。これの形状は電話を参考にしたから、名前は賢い電話を英語にした……」

 

 彼は知っているのだろうか、それは……。


X=X+1


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